2008年12月20日

ルールの語る加点・減点 〜審美の算数〜

ここの掲示板に頂いた書き込みの一節に、「演技から受ける観衆の感動は審査対象外で点数に結びつかないかもしれないが、やはり感動を期待する」というご趣旨の、私たちファンにとってはたいへん自然な受け止め方があるのを、共感とともに拝読しました。
そこで、関連するISUの公開資料を一応調べてみましたら、驚くことに次のようにありました。
いわゆる5項目のうちの「Performance/Execution(PE)」に関する記述の中、PEの評価軸の一つです。

投影(プロジェクション):エネルギーを放ち、観衆との目に見えないつながりを獲得しているか。
Projection:The skater radiates energy resulting in an invisible connection with the audience.
ISU Program Components Explanations 2004/07/31から>

つまりルールの文言上は、観衆の受ける感動はPCSのPEの中に反映される・・・感動がスケーターと観衆の一体感の現れに違いない以上、そういう論理になるようなのです。

この小さな驚きをきっかけに、もう一度、(筆者のような)一般のファンにとっても、ISUの採点基準は読むに値するのではないか、 そこに用意されている論理を一応見ておくに越したことはないのではないか、と思いました。
大袈裟に言えば、ファン全体がルールの共通の理解をすることでスポーツが皆のものとなる、審判団の評価にファンとして一喜一憂するにしても、時おり受けるあの「理不尽」な感覚を少しでもぬぐえるのではないかと感じたのです。

さて、ルールに関しては、ここのリンク集にもある「フィギュアスケート資料室」がたいへん詳しいので、そちらも読んで頂きたいのですが、ここではそれを参考にさせて頂きながらも、数項目に絞って、興味深く読める資料のリストアップと、気付いた点の簡単な言及をさせて頂こうと思います。

<下記に関連して読者の諸兄諸姉からのご教示があれば、ぜひお待ち申し上げます。>


■ 主要資料のリスト(URL)

競技とショーを分けるもの、それはある意味、「採点」に集約されるのかもしれません。

フィギュアスケートの採点に関する ISU の諸資料は次の2ページにまとめられています。
・ISU Judging System
  http://www.isu.org/vsite/vnavsite/page/directory/0,10853,4844-152055-169271-nav-list,00.html

前者ではPCSについての2つ、
・Program Components Overview
  http://www.isu.org/vsite/vfile/page/fileurl/0,11040,4844-152077-169293-64120-0-file,00.pdf

後者の中では次の3つが目につきます。
・First Aid for Technical Controllers and Technical Specialists Single
 (言わば テクニカルパネルにとってのアンチョコ)
  http://www.isu.org/vsite/vfile/page/fileurl/0,11040,4844-185270-202492-125742-0-file,00.pdf
・ISU Communication 1494
 (「価値尺度、GOE 採点ガイドラインおよびレベル」)
  http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=934
・ISU Communication 1505
 (プラスGOE 採点ガイドライン)
  http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=981


■ TPによるエレメントの認定やダウングレード等のコール

First Aid には テクニカルパネル(テクニカルコントローラー、テクニカルスペシャリスト、アシスタントスペシャリスト)の領分にからむ各規定が要領良くまとめられています。
ステップシークエンス、スパイラルシークエンス、単独スピン(チェンジフットなし)、単独スピン(チェンジフットあり)、コンビネーションスピン(チェンジフットなし)、コンビネーションスピンスピン(チェンジフットあり)、フライングスピン、単独ジャンプ、ジャンプコンビネーション、ジャンプシークエンス、それぞれについて、「規則」 「解説」 「演技ミスの対処」 の3つがまとめてあります。

たとえば単独ジャンプにおける演技ミス関連では、次のような項目についての処置が書かれています。
・回転不足のコール(着氷が1/4回転以上 早いと1段階下のジャンプにダウングレード)
・正面向きになるまでに及んだプレ回転でのテイクオフのダウングレードのコール
・Wrong Edge コール、「e」マークや「!」マーク
・SPでのジャンプ直前の中止の場合のジャンプ回数扱いのコール
・規定外ジャンプのコール(無得点・回数カウント)
・FSでの3回転や4回転の同一ジャンプが反復された場合の、シークエンス扱いのコール
・いわゆるザヤックにかかるジャンプのコール
・等々

また、ジャンプ以外では、要素とその成立・不成立の認定や、レベルのコール等を行ないますので、GOE評価以外の技術点(TES)評価の大半をテクニカルパネル(TP)が担っていると思われます。

たとえば ステップシークエンスについては、「Level 3」(ベースバリュー 3.3)は次の項目のうちTPが3個認定したもの、「Level 4」(ベースバリュー 3.9)は4個を認定したものです。

1) シークェンス中のターンおよびステップが
   やや多様(レベル2)/多様(レベル3)/複雑(レベル4)である。<必須>
2) 完全に体が回転する両方向(左と右)への(ターン、ステップによる)回転。
   各回転方向とも全体でパターンの少なくとも1/3 はカバーすること。
3) ある程度の(レベル4では十分な)上半身の動き。
4) 続け様に回転方向を転換。
   ロッカー and/or カウンター and/or ツイズル and/or 素早いステップを ただちに続けて転換すること。


■ ジャッジ(演技審判員)側でのTES減点

減点については「Grade of Execution(GOE)」という指標でこれに対処します。

ISU Communication 1494(正文、「価値尺度、GOE 採点ガイドラインおよびレベル」)
http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=934
   同日本語訳
   http://www.skatingjapan.jp/Jsf/News/comm1494J.pdf
の中の、後半のGOE減点表が 基準となっています。

たとえば単独ジャンプについては、

SPにおいて必須回転数未満(ダウングレードではない)  GOE(以下同じ)-3
間違ったエッジでの踏み切り (持続長さによる) -1 〜 -3、必ず-GOEとする
着氷での転倒 -3、必ず-GOEとする
両手がタッチダウン -2、必ず-GOEとする
ダウングレード(回転不足=UR) -1 〜 -3、必ず-GOEとする
片手またはフリー・フットがタッチダウン -1
1/4 回転までの回転不足(ダウングレードではない) -1 〜 -2
長い構え -1
踏み切りまたは着氷が両足 -2, 必ず-GOEとする
下手な踏み切り -1 〜 -2
着氷でのステップ・アウト -2, 必ず-GOEとする
拙い着氷 (トウ、不正なエッジ、など) -1

などとなっていて、演技審判員(ジャッジ)がこれを判断します。

なお、ここでいう「-1」はGOEでの1段階減を言い、具体的な減点はエレメントごとに
別途、価値尺度表に定められています。
たとえば 同じ「GOE−3(GOE−−−)」であっても、
ダブルアクセルのそれは採点が−2.1 であるのに対し、
トリプルジャンプはアクセルを除き 採点−3、
トリプルアクセルでは−4.2、4回転ジャンプでは−4.8、・・・となります。

上記「価値尺度表(SOV)」は、この Communication 1494 の前半にあり、
ジャンプの点数の他、スピン、ステップシークエンス、スパイラルシークエンスの各レベルごとの
基礎点数(ベースバリュー)、そしてそれぞれについて GOE +3 〜 −3 に対応する配点が一覧表になっています。

<なおテクニカルパネルの領域ですが、このコミュニケの最後に、レベル(Lv1〜4)獲得の必要条件がまとめてあります。>


■ ジャッジ側でのTES加点

加点についてはこちら。
   同日本語訳
   http://www.skatingjapan.jp/Jsf/News/comm1505J.pdf

たとえばジャンプについては、次の6つの指標のうち、1〜2項目該当でGOE+1、 3〜4項目該当でGOE+2、 5〜6項目該当でGOE+3 を推奨、としています。(以下 正文から和訳)

1.ジャンプの入り方が次のいずれか:意外性がある/独創的/難しい
2.直前にはっきりとしたステップや演技要素がある
3.空中での姿勢の工夫(変形)/ゆっくりした回転
4.ジャンプの高さや距離が大きい
5.着氷が良く伸びている/独創的である
6.ジャンプの入りから出まで流れが優れている(コンボやシークエンスではその途中も)

ステップシークエンス、スパイラルシークエンス、スピン、それぞれについても 6つの指標があって、
全体で(シングル分野に対し)1ページにまとめられています。
しかしその「推奨」という表現ゆえに、ジャッジの主観の余地を あえて大きく残してあるかのように、読んで感じられる方々も おられるかもしれません。


■ ジャッジ側でのPCS採点

スケーターの得点の約半分を占める Program Component Scores (PCS)。
今シーズンはISUの方針なのか、PCSがTESにさほど連動しない傾向が感じられ、またそうであれば、採点システム全体の主旨からすれば本来的なことかとも思われます。
10月末にはジョアニー・ロシェット選手が自らのホームページで、シーズンに向けての成績改善の究極のターゲットとしてこのPCS対策を徹底的に練ってきた旨、語っていましたが、その成果の大きさからもこの配点ジャンルの重要性が判ります。

前記のとおり、2つのファイルが そのガイドラインとなっています。


この PCS のいわゆる「5項目」
   SS(Skating Skills スケーティング技術)
   TR(Transitions/Linking Footwork & Movement 要素間のつなぎ)
   PE(Performance/Execution 演技力/実施能力)
   CH(Choreography/Composition 振付け/構成)
   IN(Interpretation スケーティング上の曲の解釈)
について、別ウィンドウにて新たに独自の日本語訳を試みてみました。(ここをクリック

いずれの項目のガイドラインも内容が抽象的なのですが、お読み頂けるように、PCS採点の目途を それなりに表現し尽くそうとしたもののように思われます。

<なお、2003年ごろは10点満点評価の各段階ごとの説明文が公開されていたようで、一例として「PE」においては、「4」の内容に巻き足の例示があったり、「7」までの段階ではスピードの変化のコントロール能力の程度を指標としていたりしたようですが(フィギュアスケート資料室の該当資料)、現在はISU公開資料の中に見当たりません。>


これらのガイドライン、特にGOE加点やPCSのそれは、審査の客観性を担保しているわけではなく、むしろ、主観的な採点を不可避の宿命としつつも、それぞれの評価各要素をさらに細分化してみせることによって「目配りの丁寧さ」を確保するのが、一番の目的のようにも読めます

そして、この採点システムの多岐に渡る「審美の算数」が、審査員団という「主観の束(たば)」に 素朴に依存している、まさにそのことこそが、競技としてのフィギュアスケートの喜怒哀楽に満ちた魔性の魅力をはからずも醸し出している、・・そう考えることもできるかもしれません。

・・・
皆様はどのように読まれるでしょうか?

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2008年12月18日

We Always Love You!

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2008年12月07日

GPF女子シングル予定表

以下はグランプリファイナル公式サイトおよびISUサイトに公表されたカラー時間表(URL)から、女子シニアシングルに関係するもののみを抽出したものです。
    http://www.gpfgoyang.com/pds/GPF08ColouredTimeSchedule081204.pdf
    http://www.isufs.org/events/gpf08_timeschedule.pdf

また、テレビ朝日の地上波放送時間を併記しました。


なお、ISUの競技リザルトページは ほぼリアルタイムで
   http://www.isuresults.com/results/gpf0809/index.htm
  <公式サイトでは http://www.gpfgoyang.com/main/?skin=sub_05_02.html >


公式練習1
10日(水) 8:30〜9:10PM


公式練習2
11日(木) 1:40〜2:20PM


開会式
11日(木) 4:00〜4:30PM

公式練習(SP)
12日(金) 10:20〜10:50AM


SP競技
12日(金) 8:15〜9:00PM

TV 8:00〜9:54PM

公式練習(FS)
13日(土) 11:20〜12:00AM


FS競技
13日(土) 8:05〜9:00PM

TV 7:00〜9:24PM

エキシビション(シニアメダリスト+ジュニア優勝者+選ばれた選手)
14日(日) 2:00〜5:00PM

TV 7:00〜8:54PM

バンケット
14日(日) 8:00〜10:30PM
 
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