そのキャロルさんは 1月20日が誕生日、本日、オリンピック・イヤーに 70歳の古希を迎えます。
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その名はファンであれば安藤選手の元コーチとして知らない人は少ないと思われますが、一方、日本のメディアが彼女のフィギュアスケート選手としての輝かしい功績を語ることは皆無に近いのが実情です。
今ここで、Wikipedia(特に英文)や All About での彼女の履歴紹介を繰り返すことは最小限に留めたいと思いますが、それでも、キャロル・エリザベス・ヘイス(結婚前のフルネーム)が 1957〜60の4年連続の全米女王、1956〜60の5年連続の世界選手権者、そして 1960年のスクォーヴァレー冬季オリンピックの金メダリストであることは、省略できないでしょう。 すばらしい戦績です。 フィギュアスケートの殿堂に早々と登録されたのもおおいに うなづけます。 その後これを凌駕する選手は、戦績という意味では、未だ現れていないのも事実です。
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そんな彼女、さらに調べていけば、感慨深い選手生活の機微があったことが解かります。
13歳でシニアに上がってから、4年連続して全米選手権で 4歳半年上のテンリー・オルブライトの後塵を拝する2位が続き、1955年の世界選手権でも彼女に次ぐ銀、1956の冬季五輪でも 同じくテンリーが金でキャロルが銀と言う固定した状況に、「自分はずっと引き立て役として付き添う運命なのかと思い始めていた」 と 後日、語っています。
キャロルが五輪の銀メダルを取ったとき、会場では末期癌の母親が観戦していました。 そして五輪メダリストとなった彼女にプロ転向の話が持ちかけられた時、その母はキャロルに現役にとどまって 金メダルを取って欲しい、と言ったそうです。
そして五輪の2週間後の西ドイツでの世界選手権で、彼女は母親の願いを叶え、ついにテンリーに勝って、世界女王の座につき、母マリーを最後に喜ばせます。 連続王座の始まりでした。
そのテンリーとのライバル関係では、テンリーがクラシックバレー的な表現力に秀でていたのに対し、キャロルはアスリートタイプで 当時としては高難度のジャンプやスピンを武器としていた、という構図のようで、実際、キャロルこそが ダブルアクセルを女子で最初に試合で成功させた本人であることが、それを裏付けています。 まだ彼女の13歳の時のことだそうですが、後日の彼女の2Aは映像として残っています。
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1960年のオリンピック金メダルに続いた世界王座連守を最後に引退、結婚(ご主人も五輪金メダリスト)、映画主演(白雪姫役) と続いて、78年からは自宅のあるクリーヴランドでコーチをしています。 そしてこのクリーヴランドのウィンターハーストFSCに 安藤選手が自身はじめての海外練習拠点を置いたのは、私たちファン知ってのとおりです。
キャロルコーチはどちらかというと、地元密着でボトムアップに誠実な努力を傾けている、地道なコーチで、安藤選手の他には知名度の高い生徒は数が限られ、また年代もずっと遡ります。 初期のティモシー・ゲーブルや、それぞれ全米2位になったリサ・アーヴァインやトニア・クワイトコウスキーが挙げられるのですが、彼女がコーチとして参加することになった五輪は、後にも先にも安藤選手のトリノ出場が唯一となっています。 ですのでこの時のオリンピックは、彼女にとっても、46年ぶりの晴れ舞台だったに違いありません。
選手としてどちらかと言うとアスリートタイプだったというキャロルが、同様の評価をされやすかった安藤選手に、この晴れ舞台に向けて スケートのエレガンスを求め、スピンやスパイラルに力を入れさせたという点は、興味の尽きない部分があります。
・・やはり、そんな地道なコーチにとっても完璧に向けて「戦う心」は未だに現役選手としてのそれなのだ、そう感じられてなりません。
もう12年前になりますが、キャロルコーチの言葉に、次のようなものがあります。
(3回転ジャンプが当たり前となった現在のフィギュア水準だったら彼女がどのくらいやれたか、という質問に)
「引退した選手なら皆、同じ答えだと思う。 トップにいるためにはそういうジャンプであれ、必要なことはやるしかない、 そのためならどんな努力でもする。 私たちはアスリートなんですよ、競争心はそんなにすぐに消え去るものではありません。」
"I think if you ask any retired athlete that question, you'll always get the same answer: You do what you have to do to be on top. You'd work and do all the things necessary to do those jumps," "Look, we're athletes. The competitiveness doesn't just disappear."
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「私たちはアスリート」、
・・その挑戦の心を持ち続けるキャロル・ヘイス・ジェンキンズさんに 今日、
Happy Birthday, Carol !
引用部分出典 : CNN/SI - The Cold Wars - Catching Up With...Carol Heiss
参考資料 : Wikipedia、All About、USFSA、ブリタニカ百科事典、等
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