2010年09月30日

Japan Open が開く新シーズン

記録によると「ジャパン・オープン」という名の競技が登場したのは 1997年。 男女シングル・ペア・アイスダンスの、各プロ・アマ同時参戦の変則個人競技として計4回の実施後、途絶えていましたが、トリノ五輪の後の 2006年5月14日に、今日見るような 3地域対抗のプロ・アマ混成シングル団体戦、それも ISUの採点形式による、フリープログラムでの正規認定試合として生まれ変わりました。
 
安藤選手は 2006年のこの試合で 自身の競技生活の言わば再スタートを切っていますが、翌年のPR番組内での解説によれば、この時、 ジャンパーとしての立て直しの一つの目標として、4S ではなく、3Lz3Lo を試合で確実に着氷することに、門奈コーチとともに、たいへん重きを置いていたようです。
 
演じたプログラムはトリノ五輪と同じ ウィルソン氏による 「蝶々夫人(Madame Butterfly)」、美しいスピンから入るこのプログラムで安藤選手はその3−3をなんなく回り切って着氷、その他の演技も流れが良く、フリップが抜け また 単独ループで転倒こそしますが、全体的に彼女が復調してきていることを強く感じさせるもので、エンディングは '09 年の世界選手権でも見せた大きな反り返りを、しかしこの時は短くキュートに入れて、笑顔で締めくくります。
 

 
現在、当サイトの 「スケジュール」 からたどれる、テレビ東京のジャパン・オープンのホームページは、2007年に安藤選手が世界チャンピオンとして参加したシーズンまで リンクボタンで遡れますが、( http://www.tv-tokyo.co.jp/japanopen2007/ 、記者会見動画あり)
上記の 2006年については、ウェブサイトは別途 http://www.tv-tokyo.co.jp/figure/ にアクセスする必要があります。
 
2006年のこの時の「蝶々夫人」では、安藤選手は上品な飾りを施した茶色の衣装をまとっての演技、荒川静香氏のTV解説によれば、お母様が 「心が演技に出るように」 という想いを込めて手を加えたものとのことで、これは翌 2007年のガラ(カーニバル・オン・アイス)の表紙画像で見ることができます。 ( http://www.tv-tokyo.co.jp/japanopen2007/gala.html
 

 
今回、安藤選手は 2007年以来、久々の参加となります。
 
その間、ジャパン・オープンは前回からは 春でなく 秋の実施、GPシリーズ開始のすぐ前に設定されるようになり、これが世界の最もトップにいる選手たちが新しいプログラムを ISU の採点に委ねる最初の機会になるため、海外からの注目度も俄然 高まって来ているようです。
 
安藤選手のフリープログラムも、ここでお披露目、初めて採点に付されることになります。
そして、新しい認定基準のもと、2006年同様、彼女のジャンプも新たな局面に立ち向かうことになるのだと思われます。
 
・・・
既に幾多の荒波を潜り抜けてきた彼女には しかし、新しいシーズンに向けて、ここで おおいに楽しく課題に挑んで頂きたいし、採点傾向などについても得るべき収穫を確保して GPシリーズを迎えて頂きたい ・・
そんな期待を誘うこの大会も 、すぐ目の前になりました。
 

 
プロトコルは 後日こちらに上がると想定されます。
http://www.skatingjapan.jp/InterNational/2010-2011/jo/index.htm
 
その他の情報は スケジュールのページをご覧ください。
 
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2010年09月05日

新ルール適用開始

当ブログでは ISU ルールの動向を、コミュニケ類をフォローする形で ごく簡単に掲載してまいりましたが、Courchevel で先週始まった ジュニア・グランプリ シリーズでの 新規運用の実際も念頭に、現時点での整理をしてみたいと思います。

まず ISU 総会の議案段階での 2エントリーの各項目ですが、以下の
字の総会結果を、8月公表の暫定文書から読むことができます。

来シーズンのルール変更の方向性 〜女子SPスパイラル廃止・他〜
http://miki-ando-and-fans.seesaa.net/article/148513767.html
ボーナス点のゆくえ〜ISU総会への日本の追加提案
http://miki-ando-and-fans.seesaa.net/article/151547410.html

ISU提案のうち、
  議案43<ジュニア/シニアの年齢規定変更>、
  議案63(議案211)<スモールメダルの廃止>、
  議案183<コンビネーションジャンプのベースバリューの 1.1倍化>、
  議案189<衣装規定厳格化>
否決これまでどおり となりました。

各国提案のうち、
  議案59(日本)<ヨーロッパ選手権 あるいは 四大陸選手権に出場した選手は、世界ジュニア選手権には出場資格を無くす件>、
  議案185〜8(デンマーク・フィンランド・ノルウェー・スウェーデン)<SPで、2分経過以降のジャンプのベースバリューを 1.1倍とする件>
否決これまでどおりとなりました。

日本の追加提案、
これも 否決 され、革新的な要素に与えられるとしていたボーナス点制度は廃止になりました。

各国提案のうち、
  議案163〜6と182(オーストリア・カナダ・ロシア・米国)の提案に関しては、
ジャッジの採点のうち無作為抽選で2人分を不採用とする現行方式は廃止されました。
(これの該当 IJS 条文はまだ ISU の公式サイトに掲載されていません。
 オリンピックでの演技審判員の実行総数を 12 から 9 に減らすことは公表されました。)


ISU提案のうち、
  議案48<国籍変更関係>
  議案266<ハーフループジャンプ>
  議案268<シニア女子SPのスパイラルを必須から外す件、同SP必須アクセルは3Aでも良い件>
  議案269<女子SPで、3Aは上記の場合他のジャンプで繰り返せない・ステップシークエンスでレベル表に無いジャンプは自由・スパイラルはつなぎとして扱う件>
  議案270<FSでは、2Aは計2回まで・スパイラル(シニア)は3秒以上の姿勢×2 または 6秒以上の姿勢の件>
可決そのように変更となりました。


これらの可決された項目を、次の3つのエントリーの記載内容に合流させることで、女子シングルに関する新ルールのほぼ全体像となります。

ISU 総会の結果 (*コミュニケ 1619 追記あり) ・・否決判明点につき字にて修正済
http://miki-ando-and-fans.seesaa.net/article/153753346.html

ISU 1611の概観 (その1 〜ジャンプ) ・・否決判明点につき字にて修正済
http://miki-ando-and-fans.seesaa.net/article/149284286.html

ISU 1611の概観 (その2 〜ステップ、スパイラル、スピン)
http://miki-ando-and-fans.seesaa.net/article/149788439.html




さて、Courchevel のJGP のプロトコルから、当然とは言え、ISU コミュニケ 1611 の内容が実際に適用され始めました。
一番 目につくのは、
  ・SPから SpSq が消えたこと
  ・ジャンプに 「<」 と 「<<」 の両方のマークが散見されること
の2つでしょう。

SP の要素数が1つ減って 7 になった分、Transition が重要視されることは ISU 自身が明記していますが、その結果 ことしの PCS の様子が どう変るかは、JGP 1戦のみでは判然としません。 強いて シェレペンの去年の初戦と比べれば、PCS が渋い感も受けますが、意味のある比較とも言い難いものがあります。

むしろ、要素が減った分、全体でのジャンプの重要性がさらに増したのではないでしょうか。
特に、その中での 「<」 と 「<<」 のマークが今シーズンから演技審判に開示されている点は、影響が大きいかも知れません。

・ 「<」 については、技術審判が気楽に UR(回転不足)を取る方向とは 特には なっていない様子であるものの、これを受けた演技審判の付ける GOE は(最終マイナス値の義務が無くても) −2 が多くなっています。
・ 「<<」 について見ると、今年の女子ジュニアの課題ジャンプがループだったこともあり、どうやら プレローテンション含む、ジャンプ前後両方の回転不足の合計で 技術審判が判定していることが、この DG(1回転下扱い)の出かたから伺えます。 これを受けて演技審判は GOE を最終値マイナスで採点しなければなりませんが、ここでも −3 が多くなっています。

今シーズンから演技審判の判断比重が増えたとは言え、開示された記号は強い心理的印象になるのかも知れません。



女子ジュニアの FS にはスパイラルはありませんから、今回 SP からも消えたことによって、 スパイラルの競技経験の無いまま、シニアに上がる選手が今後出てくることになりそうなのが少し気になるところです。

その女子シニアでは、FS にて固定レベル値という形でスパイラルは継続となりましたが、その「ChSp」(コレオスパイラル)がプロトコルに お目見えするのは、9月23日からの ネーベルホーン・トロフィー になります。
実際のところ、どういう変化となって我々ファンに感じられるか、興味がつのります。

直後の 10月2日、Japan Open も この新採点にて実施されます。
安藤選手は ここでいよいよ 競技シーズンを迎えます。
 
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