スピンについては項目が多く、煩瑣な記述にならざるを得ないため、ISUの記載順には従わず、エントリーの最後のほうに ご紹介します。
[ステップシークエンス]
☆ レベル獲得の要件のうち、項目の選択肢は1つ増えたものの、必須項目の達成条件が厳しくなったり、ターンの組合せによる選択要件が難しくなったりしています。
全体にレベル獲得条件が難しくなったのかどうかは、微妙な感があります。
K)
レベル必須要件である、ターンおよびステップの多様性/複雑性のうち、ターン(*) に関して要求数が
「やや多様(レベル2)」について 6つ から 7つ に、
「多様(レベル3)」について 8つ から 9つ に、
それぞれ1つずつ増えました。
<(*) スリーターン、ツイズル、ブラケット、ループ、カウンター、ロッカー>
繰り返せるのは、各種類それぞれ2回までである点は変りません。
L)
レベル要件の選択肢である上半身の動きについて、全レベルについて統一内容となり、 同時に、内容自体が特定され、
「体幹(body core)のバランスを左右するような、かつ 目に見える、腕・頭・胴 の動きであって、その合計がステップシークエンスの軌跡全体の 2/3 以上になるもの」
と表現されました。
M)
レベル要件の選択肢が1つ増えました。 その内容は、
「軌跡の半分以上を片足で行う」 というものです。
N)
「ターンおよびステップによる回転方向の素早い転換」 となっていたレベル要件の選択肢が
「難しいターン(ロッカー、カウンター、ブラケットまたはツイズル)の組み合わせを、すばやく、そして両回転方向に、シークエンスの中で少なくとも各回転方向につき2回実施」
となりました。
O)
レベル1 と 2 において、GOE−3の実配点が −1.0 でなく −0.9 となりました。
[スパイラル]
P)
スパイラルシークエンスは ベースバリュー(BV) が一律 2.0 となり、「Choreo Spirals」 と命名されました。
これは、来月の総会に向け ISU 自身が提案している内容と呼応しています。
(名前自体は 「演技構成要素としてのスパイラルを指し、つなぎ演技のそれとは区別」 という意味ではないかと想像されます。)
加減点は GOE+3=3.0 から GOE−3=−1.5 まで分布。
BV は従前の レベル1と 2の 中間くらいである反面、GOEのプラス側(加点側)がたいへん大きくなっています。
なお、「Choreo Step Sequence」というのも創設されていますが、こちらは男子FSの2つめのステップシークエンスもレベル設定が廃棄される という総会提案との整合を図るものと理解されます。
[スピン]
☆ レベル獲得要件の選択肢の数は変らないものの、そのうち6つが変更、5つが難しい方向の改変であり、さらにその他の特記事項も条件がきつくなっているので、たいへん厳しい内容になった感があります。
(注:以下で「基本ポジション(基本姿勢)」とはシット、キャメル、アップライトのこと。 レイバックやビールマンはアップライトの変種、「ポジション(姿勢)」とはこの3つに中間姿勢を加えたもの。)
Q)
レベル要件の選択肢「2」の「基本ポジションでの 別の難しいバリエーション」において、最初の姿勢バリエーションとの差を明確にすることが強調されました。
−足換えのある単独スピンの場合は、最初のとは逆の足になってからの、かつ最初のとは別の難しい姿勢バリエーションであること
−足換えの無いコンビネーションの場合は、最初の難しい姿勢の時とは異なる難しい姿勢バリエーションであること
−足換えのあるコンビネーションの場合は、最初のとは逆の足になってからの、かつ、最初のとは異なるポジションでの難しいバリエーションあること
(旧シーズンはあった、足換え無しの単独スピン内での2番目の難しいバリエーションの工夫は、レベル要件からは外れました。)
R)
レベル要件の選択肢「3」が、旧 「難しい足換え」 から、新たに 「ジャンプによる足換え」 と内容が特定されました。
S)
選択肢「5」の 「一つの基本姿勢での明確なエッジの変更」 が、次のように限定された場合にしかレベル要件としてカウントされなくなりました。
−シットスピンで バック・アウトサイド から フォア・インサイド へエッジ変更した場合
−キャメルスピンでエッジ変更した場合
T)
選択肢「6」の文言が、意味のある部分だけを抽出して 「全ての基本ポジションを両方の足で達成」した場合、となりました。
U)
選択肢「7」の 「ただちに続けて行う両方向のスピン」 が シットスピン または キャメルスピン にだけ適用されることになりました。
V)
レイバックスピンでのレベル要件である 「バックからサイドまたはその反対に1回の姿勢変更。各姿勢少なくとも3 回転。」 について、このレイバックがコンビネーションスピンの一部であった場合にも要件を満たすのみならず、1つのアップライトスピンの姿勢変化の中で行われた場合も(当然ながら)認められることが確認されました。
W)
バックエントリーのみならず、エッジの変更、難しい姿勢バリエーションのそれぞれ、これらのいずれについても、1つのプログラム内においては、最初の1回のみしか、レベル獲得要件として計算されないことになりました。
(注: 内容の異なる 「難しい姿勢バリエーション」 はそのプログラムで初出の時は、計算されます。)
X)
「足換えを伴うコンビネーションスピンでは、基本ポジション3つを全てを含むこと」 が、旧シーズンでは SPでのレベル2〜4、FSでのレベル4 の必須要件でしたが、
新シーズンでは、SP、FS、ともに レベル2〜4獲得の必須条件となりました。
また新たに、「足換えのある単独スピンでは、どちらの足でも最低1回の基本ポジション」というのが、SP・FS ともにレベル2以上を獲得するための必須条件となりました。
Y)
さらに、「足換えを伴うスピンでは、一方の足で獲得することができる項目の数は最大3個である。」
は 「最大2個」 に変更になりました。
Z)
SOV にて、スピンの GOE−3 の減点実数値が −1.0 から −0.9 に緩和されました。
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これらの改変がどのような変化となって実際の演技に現れてくるか、想像が追いつかない部分があります。
しかし、仮にもし、字面の印象どおりに スピンやステップでレベルが獲得しにくくなるのだとしても、その分、GOE やPCS の獲得に各選手・コーチのエネルギーが向けられるのではないかとも考えられます。
GOE加点表は旧シーズンのままですし、PCSのガイドラインは変更の発表が無いからです。
ISU議案の、スパイラルのSPでの廃止や FSでの固定レベル化も、その GOE や PCS への全体的傾倒、つまりは演技ジャッジへの依存度が いっそう大きくなることを示していると考えて間違いなさそうです。
反面、報道されているように、高難度のジャンプが優遇されるのも確かなことのように思われます。
その双方を感じる中、今回のコミュニケが、各スケーターの個性を発揮しやすくする変更、スケーター間で同じ内容が繰り返されることが少なくなるルール変更、そういうものであることが シーズンが進むにつれて判明することを願いたいと思います。
皆様からも、気づかれた点など、ご指摘頂ければ幸いです。