2010年08月01日

ISUによる採点巾の管理 〜コミュニケ 1631

ISU は去る 7月21日付けで、コミュニケ 1631 を発表し、これは1401 の改訂として即時施行されました。
その主眼は、テクニカルパネル(技術審判)による演技要素のレベル評価や 演技審判によるGOEやPCSの採点、それらの多岐にわたる判断行為について、点数のバラつきが一定の巾に納まるように、縛りを設けるものとなっています。

http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=1951

この目的のために、ISU は 「Officials Assessment Commission (OAC) =審判査定委員会<仮訳、以下同じ>」 を設置し、理事会でその実際を 「Rules of Procedure for the OAC =審判査定委員会(OAC)運用規定」 として定めていますが、このコミュニケ1631で全面改訂しました。



まず、次の条件を満たす ISU ジャッジ・レフェリー・テクニカルコントローラーは 「OACプール =審判査定委員候補」 としてリストアップされ、GPシリーズやISU選手権や五輪での着任に応じるよう、ISU会長の名において随時 求められます。
条件 a) 直近の ISU ジャッジ・レフェリー・テクニカルコントローラー の名簿に載っている者で、理事会の主催するセミナーに参加でき、かつ、過去3年間に 「アセスメント1(後述)」 を超える注意を受けていないこと。
条件 b) 競技のデータを分析する能力のあること、迅速かつ整然とした仕事ができること、英語を書けること、レポートを書き慣れていること、常に客観性を保っていることを実際に示せること。

また、実際にこの中からOAC委員に任命された試合では、その者はジャッジ、レフェリー、あるいはテクニカルコントローラーに就くことはできず、また任命時点以降のシーズン中の他の試合も就かないことを「推奨」されます。



その試合ごとに この審判査定委員が選ばれるわけですが、では何をするかと言うと、各試合のジャッジ・レフェリー・テクニカルパネルの判断について、逐一 異常なものが無いか、査定します。

ISU選手権と五輪の場合は3人以上が任命されて、各試合直後に 現地で 種目ごとに委員2人が 採点のプリントアウトを見ながら非公開で、これを行います。 PCSについては委員同志で協議の上で査定し、またOACとしてのPCSを後述の計算で加味します。
査定委員はまた、演技審判が各自単独での採点を守っているか、助力を求めたりしていないか、以前の成績資料などを見ながら採点していないかも査定し、これらについては試合中にもそうしたジャッジの異常はレフェリーに伝えるものとしています。

GPシリーズ(シニア・ジュニア)や WTT の場合は、各試合・種目ごとに委員2人が 各自の居宅で ハードコピー資料と DVDとを元に、早急かつ非公開で、これを行います。

それ以外の国際試合には、OAC委員は派遣されませんが、レフェリーが演技審判員の行動についてのレポートを提出します。 採点面でも GOEについてのみは、異常が認められた場合は報告の対象としています。



採点の査定は 次のような計算方法で行うものとして、理事会決定されています。

1) 演技審判(ジャッジ)の GOE 採点についての査定

  ・ 全審判員とレフェリーの採点とがコンピューターに入力され、各スケーターの一つ一つの演技要素ごとに、平均点が出されます。
     審判員の数が7以上の試合の場合は、レフェリーの採点を2倍にカウントします。
     <この平均点は、実際のスケーターの競技結果とは別のものです。>

  ・ 各審判員について、この平均点からの差の値が演技要素ごとに算出されます。

  ・ GOE の場合、プラス側・マイナス側、それぞれの絶対値の合計(「偏差合計」<仮訳>)が競技ごとに算出されます。

たとえば シングルSP では次のように出力されます。

GOE.gif

そしてGOEでは 演技要素の数 × 1.0 を 許容偏差合計<仮訳>とします。

このジャッジの場合、この競技での偏差合計は ( GOE では絶対値を加算して) 6.8 (上図中 最下段) となったので、SP の場合は演技要素が7つなので、許容偏差合計=7.0 の中に納まっており、査定の結果 お咎め無し、ということになります。


2) 演技審判(ジャッジ)の PCS 採点についての査定

  ・ 全審判員とレフェリー、そして現地に査定委員がいる試合では OAC による PCS 採点(一つに集約)とが
     各スケーターごとに コンピューターに入力されます。
     レフェリーと OAC とは 1.5 倍されます。
     GP シリーズと WTT のみについては審判員の数が7以上の時、レフェリーは 2.0 倍されます。

  ・ 各スケーターの PCS 5項目それぞれごとに、平均点が出されます。

  ・ 各審判員について、この平均点からの差の値が各 PCS 項目ごとに算出されます。

  ・ PCS の場合、プラス側・マイナス側、それぞれ符号が活きた状態での合計(「偏差合計」<仮訳>)が競技ごとに算出されます。

結果は次のように出力されます。

PCS.gif

そして PCS では 項目の数 × 1.5 = 7.5 を 許容偏差合計<仮訳>とします。

このジャッジの場合、この競技での偏差合計は ( PCS では符合どおり演算して) +0.40 (上図中 最下段) となったので、許容偏差合計=7.5 の中に納まっており、査定の結果 お咎め無し、ということになります。


以上はコンピューターが計算をするわけですが、査定委員団は許容偏差合計を超えた審判について、OAC としての査定のレポートを書くことになります。 この中で、その審判に「アセスメント」の1から3のどれを与えるかの提案をし、これは速やかに ISU事務局に送付され、技術委員会に渡されることになっています。

このレポートの中では、OAC は審判の査定に専念し、競技の結果についての疑問や批判を呈したり、査定以外の話題、例えばスケーターの能力についての論評等を加えてはいけないことになっています。
反面、許容偏差合計を超えるコンピューター出力となった審判について、合理的な根拠から擁護することは認められています。

最後に技術委員会が問題となった審判の「アセスメント」を決定しますが、対象となった審判は、通知を受けたら、弁明をすることができます。
しかし この弁明は、累積アセスメントの見直しにしか効果を及ぼしません。


3) テクニカルパネルのレベル判定等の査定

テクニカルパネル3人の判断、また データオペレーターや再生オペレーターのなしたことについては、任命された審判査定委員の他にも 以下の者が、間違い等を指摘することができます:会長、理事会、重役会、該当技術委員会、ラウンドテーブル会議に出席したレフェリー。

この誤った判断等についての指摘は、フィギュア部門の副会長に根拠を添えてレポートの形で提出されますが、この副会長は自ら指名する4人の匿名委員それぞれにこれを送ります。 この4人は相互にも非公開で かつ 全員所属連盟(国)が異なっており、次の構成になります。
・ 指摘を受けた者や演技したスケーターとは異なる国籍のテクニカルコントローラー 1名または2名
・ 指摘を受けた者や演技したスケーターとは異なる国籍のテクニカルスペシャリスト 1名または2名
・ 該当技術委員会から 1名、ただし該当技術委員会の委員がその試合のテクニカルパネルやレフェリーに参加していた場合は 0名

この4名からバラバラに受けた結果をもとに、副会長は録画や テクニカルパネルの作業時の録音を参照しながら意見書を作り、最終的には理事会が査定についての決定をします。

レフェリーについても前記の採点行為以外の内容に関しては、同様な流れによる査定が規定されています。



以上、コミュニケに詳細に記述されている様々な手続き規定については 内容紹介を大幅に割愛しましたが、詰まるところ、この制度の実効性は罰則で担保されることになります。
すなわち、上記の査定によって出される「アセスメント」は各審判等について累積記録され、アセスメント4に達すると降格あるいは資格剥奪を言い渡されるのです。

こうして見るとやはり、ジャッジによる GOE や PCS の採点などに上下巾のタガを嵌めるのが、この OAC という委員会の主たる役割とも考えられるわけですが、今後この制度が、行き過ぎた加点や いわれ無い減点を排除する方向に進むのか、それとも、スケーターの過去の実績の印象等から構成された「無難な」採点に終始する方向に進むのか、いずれにしても常に議論百出の素地である領域に関わるものなので、今後の推移に注目したいところです。
 


posted by administrator at 19:37 | TrackBack(0) | ISUルール関係 | 更新情報をチェックする

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