2011年05月11日

ISU 1672 の概観・他

ISU は先週、5月5日付の コミュニケーション 1672 として 昨年の コミュニケ1611 の改定を発表し、この中で
   T) Scale of Value (SOV、各演技エレメントの価値尺度表)、
   U) Grade of Execution (GOE)の加点ガイドライン、
   V) 同 GOE 減点表、
   W) レベル獲得条件表、
それぞれにつき
いくつかの項目を修正・加筆しています。
 
これらは ISUルールの変更ではなく、同ルール353に謳う「運用」として、総会採決を経ずに ISU が直接発行するもので、次の 2011-12 シーズンからの適用になります。

なお、今シーズン(6月末まで)適用のコミュニケ 1611 についてはこちらのエントリーをご覧ください。
 


 
以下、女子シングルに限って見てみます。


[ジャンプ]
 
A)
ダブルトーループとダブルサルコウの基礎点が、回り切った場合・回転不足 ともに 0.1 下げられ、それぞれ 1.3 、 0.9 となりました。
 
B)
ショートプログラムでの要請である、単独トリプルジャンプへとつながる ステップないし代替要素につき、ジャンプへと直ちにつながらない場合には GOE のマイナス要素とするべきことが特記されました。
GOE の減点表でも、
ステップまたは代替要素が無い場合は −3 でかつ最終 GOE もマイナス、
ジャンプとのあいだに間が空いたり、ステップや代替要素が単一のものだったりした場合は −1 〜 −2、
となっています。
また、この導入要素としてステップを採用する場合は、ジャンプのテイクオフがステップのリズムと一致していなければならない、とも特記されています。

 
[スピン]
 
C)
レベル要件の選択肢にて、「明確なエッジ替え」 が適用されるスピンの種類に、(シット(ただしBIからFOのみ) と キャメルの他に) レイバックとビールマンが加わりました。
 
D)
レベル要件の選択肢である同一姿勢(脚替え・エッジ替えなし)での 8回点以上 の対象が 「キャメル、難しいシット、レイバック、あるいは難しいアップライト」 となり、シットについて厳しくなりました。
また、一つのスピンの中では この要件は (脚替えの前と後で各8回以上回ったとしても) 1回しかカウントされない点が明記されました。
 
E)
レイバックスピンの姿勢替えがレベル獲得条件となるのは それが明確なものの場合のみ、となりました。
 
F)
プログラム中、最初の1回に限ってレベル獲得条件にカウントされる付加要素に、(バックエントリー・エッジ替え・難しいバリエーションの他に) フライングエントリーが加わりました。
ただし、普通のフライングキャメルエントリーはこの条件に該当しないこと、しかし「最初の1回」の判断対象にはなることが特記されています。
 
G)
SPでの 最終GOEマイナス項目であった、要求姿勢数に満たない場合の GOE −2〜−3、というのが無くなり、代わりにSOVでレベル0 という扱いになりました。

 
[ステップシークエンス]
 
H)
レベル2 を獲得した場合の基礎点が 2.3 から 2.6 に引き上げられました。
また、レベル4 につき、GOE+1、+2、+3、それぞれの換算が +0.7、+1.4、+2.1 へと3割減になりました。
 
I)
音楽との連動性が無い場合、その分の GOE を −1 〜 −2 とすることになりました。
 
J)
レベル要件の選択肢のうち、重心の変動のある上体の活用については、その必要軌跡が 2/3以上 から 1/2以上 に緩和されました。
 
K)
レベル要件の選択肢のうち、「難しいターン(ロッカー、カウンター、ブラケットまたはツイズル)の組み合わせを、すばやく、そして両回転方向に、シークエンスの中で少なくとも各回転方向につき2回実施」 となっていたのは、「シークエンスの中で、難しいターン(ロッカー、カウンター、ブラケット、ツイズルまたはループ)のうち3つを素早く組み合わせることを2回、異なった組み合わせで実施」 と変更になりました。
同じ順番・同じエッジでの組み合わせはこれに該当しないという念押しも書いてあります。

L)
ジャンプを半回転を超えてステップシークエンスに加えると GOEが1段階の減となる点について、これは SOV表にあるジャンプに限定されました。


[コレオスパイラル]
 
M)
GOE+1、+2、+3、それぞれの換算が +0.7、+1.4、+2.1 へと3割減になりました。
 
N)
GOE加算要素として、「プログラムのコンセプト・性格を反映している」 というのが加わりました。
 
 

 
なお、このコミュニケに先立つ ISU 1671 において、
新シーズンの ISUグランプリシリーズから、世界選手権6位以内の 「シード」選手の出場できる GP の数を、一定条件のもとで、 3 に増やせるように計らうこと、 その詳細は別途のコミュニケで発表すること、 が記されました。
 
その他にも、新しいシーズンに向けて、いくつかの改変があるかもしれません。
 
そのつど、当サイトでも 出来るかぎりの追跡をしたいと考えています。
 
 
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2010年09月05日

新ルール適用開始

当ブログでは ISU ルールの動向を、コミュニケ類をフォローする形で ごく簡単に掲載してまいりましたが、Courchevel で先週始まった ジュニア・グランプリ シリーズでの 新規運用の実際も念頭に、現時点での整理をしてみたいと思います。

まず ISU 総会の議案段階での 2エントリーの各項目ですが、以下の
字の総会結果を、8月公表の暫定文書から読むことができます。

来シーズンのルール変更の方向性 〜女子SPスパイラル廃止・他〜
http://miki-ando-and-fans.seesaa.net/article/148513767.html
ボーナス点のゆくえ〜ISU総会への日本の追加提案
http://miki-ando-and-fans.seesaa.net/article/151547410.html

ISU提案のうち、
  議案43<ジュニア/シニアの年齢規定変更>、
  議案63(議案211)<スモールメダルの廃止>、
  議案183<コンビネーションジャンプのベースバリューの 1.1倍化>、
  議案189<衣装規定厳格化>
否決これまでどおり となりました。

各国提案のうち、
  議案59(日本)<ヨーロッパ選手権 あるいは 四大陸選手権に出場した選手は、世界ジュニア選手権には出場資格を無くす件>、
  議案185〜8(デンマーク・フィンランド・ノルウェー・スウェーデン)<SPで、2分経過以降のジャンプのベースバリューを 1.1倍とする件>
否決これまでどおりとなりました。

日本の追加提案、
これも 否決 され、革新的な要素に与えられるとしていたボーナス点制度は廃止になりました。

各国提案のうち、
  議案163〜6と182(オーストリア・カナダ・ロシア・米国)の提案に関しては、
ジャッジの採点のうち無作為抽選で2人分を不採用とする現行方式は廃止されました。
(これの該当 IJS 条文はまだ ISU の公式サイトに掲載されていません。
 オリンピックでの演技審判員の実行総数を 12 から 9 に減らすことは公表されました。)


ISU提案のうち、
  議案48<国籍変更関係>
  議案266<ハーフループジャンプ>
  議案268<シニア女子SPのスパイラルを必須から外す件、同SP必須アクセルは3Aでも良い件>
  議案269<女子SPで、3Aは上記の場合他のジャンプで繰り返せない・ステップシークエンスでレベル表に無いジャンプは自由・スパイラルはつなぎとして扱う件>
  議案270<FSでは、2Aは計2回まで・スパイラル(シニア)は3秒以上の姿勢×2 または 6秒以上の姿勢の件>
可決そのように変更となりました。


これらの可決された項目を、次の3つのエントリーの記載内容に合流させることで、女子シングルに関する新ルールのほぼ全体像となります。

ISU 総会の結果 (*コミュニケ 1619 追記あり) ・・否決判明点につき字にて修正済
http://miki-ando-and-fans.seesaa.net/article/153753346.html

ISU 1611の概観 (その1 〜ジャンプ) ・・否決判明点につき字にて修正済
http://miki-ando-and-fans.seesaa.net/article/149284286.html

ISU 1611の概観 (その2 〜ステップ、スパイラル、スピン)
http://miki-ando-and-fans.seesaa.net/article/149788439.html




さて、Courchevel のJGP のプロトコルから、当然とは言え、ISU コミュニケ 1611 の内容が実際に適用され始めました。
一番 目につくのは、
  ・SPから SpSq が消えたこと
  ・ジャンプに 「<」 と 「<<」 の両方のマークが散見されること
の2つでしょう。

SP の要素数が1つ減って 7 になった分、Transition が重要視されることは ISU 自身が明記していますが、その結果 ことしの PCS の様子が どう変るかは、JGP 1戦のみでは判然としません。 強いて シェレペンの去年の初戦と比べれば、PCS が渋い感も受けますが、意味のある比較とも言い難いものがあります。

むしろ、要素が減った分、全体でのジャンプの重要性がさらに増したのではないでしょうか。
特に、その中での 「<」 と 「<<」 のマークが今シーズンから演技審判に開示されている点は、影響が大きいかも知れません。

・ 「<」 については、技術審判が気楽に UR(回転不足)を取る方向とは 特には なっていない様子であるものの、これを受けた演技審判の付ける GOE は(最終マイナス値の義務が無くても) −2 が多くなっています。
・ 「<<」 について見ると、今年の女子ジュニアの課題ジャンプがループだったこともあり、どうやら プレローテンション含む、ジャンプ前後両方の回転不足の合計で 技術審判が判定していることが、この DG(1回転下扱い)の出かたから伺えます。 これを受けて演技審判は GOE を最終値マイナスで採点しなければなりませんが、ここでも −3 が多くなっています。

今シーズンから演技審判の判断比重が増えたとは言え、開示された記号は強い心理的印象になるのかも知れません。



女子ジュニアの FS にはスパイラルはありませんから、今回 SP からも消えたことによって、 スパイラルの競技経験の無いまま、シニアに上がる選手が今後出てくることになりそうなのが少し気になるところです。

その女子シニアでは、FS にて固定レベル値という形でスパイラルは継続となりましたが、その「ChSp」(コレオスパイラル)がプロトコルに お目見えするのは、9月23日からの ネーベルホーン・トロフィー になります。
実際のところ、どういう変化となって我々ファンに感じられるか、興味がつのります。

直後の 10月2日、Japan Open も この新採点にて実施されます。
安藤選手は ここでいよいよ 競技シーズンを迎えます。
 
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2010年08月01日

ISUによる採点巾の管理 〜コミュニケ 1631

ISU は去る 7月21日付けで、コミュニケ 1631 を発表し、これは1401 の改訂として即時施行されました。
その主眼は、テクニカルパネル(技術審判)による演技要素のレベル評価や 演技審判によるGOEやPCSの採点、それらの多岐にわたる判断行為について、点数のバラつきが一定の巾に納まるように、縛りを設けるものとなっています。

http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=1951

この目的のために、ISU は 「Officials Assessment Commission (OAC) =審判査定委員会<仮訳、以下同じ>」 を設置し、理事会でその実際を 「Rules of Procedure for the OAC =審判査定委員会(OAC)運用規定」 として定めていますが、このコミュニケ1631で全面改訂しました。



まず、次の条件を満たす ISU ジャッジ・レフェリー・テクニカルコントローラーは 「OACプール =審判査定委員候補」 としてリストアップされ、GPシリーズやISU選手権や五輪での着任に応じるよう、ISU会長の名において随時 求められます。
条件 a) 直近の ISU ジャッジ・レフェリー・テクニカルコントローラー の名簿に載っている者で、理事会の主催するセミナーに参加でき、かつ、過去3年間に 「アセスメント1(後述)」 を超える注意を受けていないこと。
条件 b) 競技のデータを分析する能力のあること、迅速かつ整然とした仕事ができること、英語を書けること、レポートを書き慣れていること、常に客観性を保っていることを実際に示せること。

また、実際にこの中からOAC委員に任命された試合では、その者はジャッジ、レフェリー、あるいはテクニカルコントローラーに就くことはできず、また任命時点以降のシーズン中の他の試合も就かないことを「推奨」されます。



その試合ごとに この審判査定委員が選ばれるわけですが、では何をするかと言うと、各試合のジャッジ・レフェリー・テクニカルパネルの判断について、逐一 異常なものが無いか、査定します。

ISU選手権と五輪の場合は3人以上が任命されて、各試合直後に 現地で 種目ごとに委員2人が 採点のプリントアウトを見ながら非公開で、これを行います。 PCSについては委員同志で協議の上で査定し、またOACとしてのPCSを後述の計算で加味します。
査定委員はまた、演技審判が各自単独での採点を守っているか、助力を求めたりしていないか、以前の成績資料などを見ながら採点していないかも査定し、これらについては試合中にもそうしたジャッジの異常はレフェリーに伝えるものとしています。

GPシリーズ(シニア・ジュニア)や WTT の場合は、各試合・種目ごとに委員2人が 各自の居宅で ハードコピー資料と DVDとを元に、早急かつ非公開で、これを行います。

それ以外の国際試合には、OAC委員は派遣されませんが、レフェリーが演技審判員の行動についてのレポートを提出します。 採点面でも GOEについてのみは、異常が認められた場合は報告の対象としています。



採点の査定は 次のような計算方法で行うものとして、理事会決定されています。

1) 演技審判(ジャッジ)の GOE 採点についての査定

  ・ 全審判員とレフェリーの採点とがコンピューターに入力され、各スケーターの一つ一つの演技要素ごとに、平均点が出されます。
     審判員の数が7以上の試合の場合は、レフェリーの採点を2倍にカウントします。
     <この平均点は、実際のスケーターの競技結果とは別のものです。>

  ・ 各審判員について、この平均点からの差の値が演技要素ごとに算出されます。

  ・ GOE の場合、プラス側・マイナス側、それぞれの絶対値の合計(「偏差合計」<仮訳>)が競技ごとに算出されます。

たとえば シングルSP では次のように出力されます。

GOE.gif

そしてGOEでは 演技要素の数 × 1.0 を 許容偏差合計<仮訳>とします。

このジャッジの場合、この競技での偏差合計は ( GOE では絶対値を加算して) 6.8 (上図中 最下段) となったので、SP の場合は演技要素が7つなので、許容偏差合計=7.0 の中に納まっており、査定の結果 お咎め無し、ということになります。


2) 演技審判(ジャッジ)の PCS 採点についての査定

  ・ 全審判員とレフェリー、そして現地に査定委員がいる試合では OAC による PCS 採点(一つに集約)とが
     各スケーターごとに コンピューターに入力されます。
     レフェリーと OAC とは 1.5 倍されます。
     GP シリーズと WTT のみについては審判員の数が7以上の時、レフェリーは 2.0 倍されます。

  ・ 各スケーターの PCS 5項目それぞれごとに、平均点が出されます。

  ・ 各審判員について、この平均点からの差の値が各 PCS 項目ごとに算出されます。

  ・ PCS の場合、プラス側・マイナス側、それぞれ符号が活きた状態での合計(「偏差合計」<仮訳>)が競技ごとに算出されます。

結果は次のように出力されます。

PCS.gif

そして PCS では 項目の数 × 1.5 = 7.5 を 許容偏差合計<仮訳>とします。

このジャッジの場合、この競技での偏差合計は ( PCS では符合どおり演算して) +0.40 (上図中 最下段) となったので、許容偏差合計=7.5 の中に納まっており、査定の結果 お咎め無し、ということになります。


以上はコンピューターが計算をするわけですが、査定委員団は許容偏差合計を超えた審判について、OAC としての査定のレポートを書くことになります。 この中で、その審判に「アセスメント」の1から3のどれを与えるかの提案をし、これは速やかに ISU事務局に送付され、技術委員会に渡されることになっています。

このレポートの中では、OAC は審判の査定に専念し、競技の結果についての疑問や批判を呈したり、査定以外の話題、例えばスケーターの能力についての論評等を加えてはいけないことになっています。
反面、許容偏差合計を超えるコンピューター出力となった審判について、合理的な根拠から擁護することは認められています。

最後に技術委員会が問題となった審判の「アセスメント」を決定しますが、対象となった審判は、通知を受けたら、弁明をすることができます。
しかし この弁明は、累積アセスメントの見直しにしか効果を及ぼしません。


3) テクニカルパネルのレベル判定等の査定

テクニカルパネル3人の判断、また データオペレーターや再生オペレーターのなしたことについては、任命された審判査定委員の他にも 以下の者が、間違い等を指摘することができます:会長、理事会、重役会、該当技術委員会、ラウンドテーブル会議に出席したレフェリー。

この誤った判断等についての指摘は、フィギュア部門の副会長に根拠を添えてレポートの形で提出されますが、この副会長は自ら指名する4人の匿名委員それぞれにこれを送ります。 この4人は相互にも非公開で かつ 全員所属連盟(国)が異なっており、次の構成になります。
・ 指摘を受けた者や演技したスケーターとは異なる国籍のテクニカルコントローラー 1名または2名
・ 指摘を受けた者や演技したスケーターとは異なる国籍のテクニカルスペシャリスト 1名または2名
・ 該当技術委員会から 1名、ただし該当技術委員会の委員がその試合のテクニカルパネルやレフェリーに参加していた場合は 0名

この4名からバラバラに受けた結果をもとに、副会長は録画や テクニカルパネルの作業時の録音を参照しながら意見書を作り、最終的には理事会が査定についての決定をします。

レフェリーについても前記の採点行為以外の内容に関しては、同様な流れによる査定が規定されています。



以上、コミュニケに詳細に記述されている様々な手続き規定については 内容紹介を大幅に割愛しましたが、詰まるところ、この制度の実効性は罰則で担保されることになります。
すなわち、上記の査定によって出される「アセスメント」は各審判等について累積記録され、アセスメント4に達すると降格あるいは資格剥奪を言い渡されるのです。

こうして見るとやはり、ジャッジによる GOE や PCS の採点などに上下巾のタガを嵌めるのが、この OAC という委員会の主たる役割とも考えられるわけですが、今後この制度が、行き過ぎた加点や いわれ無い減点を排除する方向に進むのか、それとも、スケーターの過去の実績の印象等から構成された「無難な」採点に終始する方向に進むのか、いずれにしても常に議論百出の素地である領域に関わるものなので、今後の推移に注目したいところです。
 
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2010年06月19日

ISU 総会の結果 (*コミュニケ 1619 追記あり)

ISUの総会はその議事を終え、かなり簡略化された概要紹介が公式サイトに掲示されました。

http://www.isu.org/vsite/vcontent/content/transnews/0,10869,4844-128590-19728-18885-308030-3787-4771-layout160-129898-news-item,00.html

ここに書かれているのは、

― アイスダンス競技が ショートダンス(新) と フリーダンス の2つで構成されるという変更の可決
― ISU選手権における 下位選手の予選(Qualifying Round)の実施と参加資格としての最低得点経験の条件付加、そしてフリースケートの定員の減
― World Team Trophy (国別対抗戦) の ISUルール上の位置付けの明確化
― ISU の理事会・スポーツ重役会・技術委員会からの「諸提案」の可決

であり、また選挙結果も書かれていますが、
後者にては チンクアンタ会長の最後の再選や、日本の平松女史の理事当選を読むことが出来ます。



その他、ここには書かれていませんが海外メディアが伝えるところでは、カナダが提案していた、採点基盤としての員数不足の解消を目的とした、演技審判の無作為抽選の廃止も、賛成多数で可決されたようです。
また、シニアとジュニアの年齢規定を変更する ISU 提案は否決されたとのことです。(ノービスに関する提案部分は承認された模様。)

また、日本のメディアが報じたものとしては、上記のうち、女子シングルのSPにおいて、2Aの代わりに 3Aが選択できるようになったこと(*) (注:その場合はコンビネーションで3Aを跳ぶことはできない)、また日本からの提案であった、その日最も難度の高い演技要素にボーナス点を与えるというのは否決されたことが挙げられます。



議案の審議結果の詳細が ISU等から報じられた場合は、ここに加筆しますが、可決されたことが現時点で推定されるもののうち、一部を列記しておきます。

― コンビネーションジャンプ(ジャンプシークエンスではない)のベースバリューを 1.1倍にし、GOE は難しいほうのジャンプで採点。 <注:8月公表の Special Regulations において、否決されたことが判明>

― コンビネーションジャンプやジャンプシークエンスにて、ハーフループにループのベースバリュー付与。(*)

― シニア女子のSPにて、スパイラルを必須要素から外し、演技要素を計7に削減。(*)

― 同SPにてステップシークエンスの中ではレベル表に無いジャンプは自由に演じられ、スパイラルが演じられた場合はつなぎ(Transition)として評価。(*)

― フリープログラムにおいては、2Aはシングルジャンプ・コンビネーションジャンプ・ジャンプシークエンスのいかんに係らず、計2回までしか演じられない。
また、スパイラルは3秒以上姿勢を保持した2つのポジション または 6秒以上保持した1つのポジション以上で構成されねばならず、これを満たさない場合は点数が与えられず、また満たした場合はレベル段階の無い固定されたベースバリューのみ与えられ、評価はGOEで定められる。 (*)

<以下、24日夜 追記>

6月24日に、ISU コミュニケ 1619〜1621 が発表され、そのうち 女子シングルに関わる 1619
http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=1892
に記載されたことを確認しますと、上記のうち、(*) を付けた5項目の内容が明記されています。
<男子等については省略します。>

なお、「コンビネーションジャンプ(ジャンプシークエンスではない)のベースバリューを 1.1倍にし、GOE は難しいほうのジャンプで採点。」 については、このコミュニケにては確認できません。 <注:8月公表の Special Regulations において、否決されたことが判明>

今後、「ISU Rules」 http://www.isu.org/vsite/vnavsite/page/directory/0,10853,4844-153889-171105-nav-list,00.html
にて全容が掲載されるのを待ちたいと思います。

なお、今回の 1619 には、次のようなことも書かれています。

― ジャンプとジャンプがレベル表に無い種類のジャンプで繋がれた場合は、シークエンスとして扱う。(注:コンビネーションとは配点係数が異なる)

― 単一スピン および (足換えや姿勢変化の無い)フライングスピンにおける、最終のアップライトの締めくくりは、回転数がいくつであれ、姿勢変化には (エッジ換えや姿勢のバリエーション等の付加内容が無い限り) 計上しない。

― いかなる演技要素においても、規定外の内容が含まれる場合は、規定外要素の減点が適用される。レベル1以上の要件が見たされればレベル1が与えられ、そうでない場合はレベルが付かない。

― 国際競技においては、主催国の国内テクニカルスペシャリストをその競技のアシスタントテクニカルスペシャリストとすることができる。 この場合 その指名はその加盟国にて行わねばならない。

― 「演技開始のやり直し」に対しあった減点−2 は廃止し、代わりに PCS にてマイナスに評価されることが望まれる。

― 減点に付いて:
    a) 衣装・制限時間の違反と 声楽についての減点(各−1) は、レフェリーと演技審判団との合計の多数決により、票が同数の場合は減点無しとする。
    b) 転倒と規定外要素についての減点は、テクニカルパネル(3名)の多数決による。

<ペア等に関する記述、審判員の会議参加に関する記述、ISU選手権参加資格点数については省略。  追記は以上です。>

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2010年05月30日

ボーナス点のゆくえ〜ISU総会への日本の追加提案

5月26日、ISU 総会の追加議案候補が 25日付のコミュニケ 1615 として発表されました。

http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=1875

先日のコミュニケ 1609 で発表された総会議案書の各提案 (重要なものは こちら ) が、それぞれ期限前に提出された正規のものであるのに対し、 こちらは期日後に追加提出されたもので、総会出席の8割以上の投票権者(国)の認証があれば議題として扱われる、というもののようです。
そして案件自体の緊急性の有無にかかわらず、期日の関係で「緊急事項」と命名されています。



このコミュニケ 1615 の中に、フィギュアに関するものとして、ISU 理事会の提案・フランスの提案・日本の提案、それぞれ1つずつがあります。

ISU 理事会からの追加提案の趣旨は、五輪競技に フィギュアスケートの団体戦が組み込まれた場合は、ISU 理事会が IOC と協議の上、その実施上および技術上の詳細を定める、というものです。

フランスからの追加提案の趣旨は、五輪開催年については ヨーロッパ選手権と四大陸選手権を中止し、その時期に世界選手権を持って来る、というものです。

そして 日本からの追加提案は、これまで ISU ルールに規定されているにもかかわらず実際に運用されたことの無い ボーナス点の制度 について、その獲得条件を少し変更することで、スケーター達の積極的挑戦を促そう、という趣旨のものです。



この日本の提案だけは たしかに、「緊急事項」の名に値するかもしれません。
というのは、実は ISU 技術委員会から ボーナス点制度の廃止が 既に今回、他の重要議案とともに提起されていて、ISU 側の提案であるがゆえに、その廃止案が通る可能性が たいへん大きいからです。


これまでの ISU 規定では、ボーナス点について次のようになっていました。 (これまで適用実例はありません。)

[ Rule 353, paragraph 1) h) iv) ]
革新的な演技要素、動作、あるいはトランジション(つなぎ)には特別ボーナスの2点が与えられる。
このボーナス点は一つのプログラムにつき1回しか獲得できない。

[ 同 1) h) v) ]
ボーナス点は(もし獲得された場合は)Total Technical Score(おそらくTESに同義)に加算される。

[ Rule 522, paragraph 1 e) ]
ボーナス点
他に例が無く、特別な、そして革新的な動作*(* 広義)には、Well Balanced Program の規定の要素数以内であれば、あるいは同規定に挙げられていない特異なものであれば、ボーナスとして2点が与えられる。
これは、同じ技をやる他のスケーター/ペアがいないというのでないかぎり、最大1シーズンの間しか与えられない。
同一試合で同じ技を行うスケーター/ペアがいた場合、双方にボーナス点が与えられるが、その場合はその競技以降は、この技へのボーナスは与えられなくなる。
ボーナスは テクニカル・スペシャリスト(達)がこれに該当する場合に指摘し、テクニカル・コントローラーがこれを確認し、ISU の事務局に直ちに報告する。


これを、JSF は次のように変えるよう提案しています。

[ Rule 353, paragraph 1) h) iv) ]
類を見ない演技要素、そしてその日実施された最も難度の高い演技要素には、ボーナス2点が与えられる。
ボーナスは一つのプログラム内では最大2つ与えられる。
該当する演技要素は予め技術委員会で定め、シーズンの始まる前に ISU コミュニケの中に記述される。

提案理由として、難しい技への挑戦の意義が強調されています。



ボーナス点制度の廃止は、今回 ISU の技術委員会から出された総会議案 184、227、230、251 に謳われており、「これまで利用されたことがなく、実際的でない」 という理由が挙げられています。
これに対し、日本からの提案は、「では実際的なレベルで利用できるようにして初期目的を果たそう」 という趣旨の訴えをもって、廃止を食い止めようとするものと思われます。

賛成国が多いかどうかで考えると、日本の提案にはプラス・マイナス、両面がありそうです。

プラスの面 :
ご記憶の方も多いと思われますが、2〜3年前には、3回転ジャンプを5種類全て一つのプログラムで成功させた場合はボーナス点を与えるべきだ、という議論が頻繁にありました。
ボーナス点が競技参加者の全体的水準を上げるインセンティブとして機能するであろうことは、この例からも、容易に想像できますし、誰もが反対しにくい側面です。

マイナスの面 :
ボーナスの適用にあたり、技術的な難度に重点を置いている提案とも読めるため、他の国にとってはジャンプへの日本の偏り、自国の有利化と感じられる可能性があると思われます。
たとえば 3Aに対しボーナスをさらに与えよ、という提案のごとく受け止められると、反対者が多くなるかもしれません。



ISU 自身からの提出議案と異なり、そもそも、各加盟国からの個別提案が総会で承認採用に至るということはあまり無いようですし、この日本の追加提案には Rule 522 についての関連事項が伴っていないなど、暫定的な記述の様相がみられるので、審議に付されるかどうかもよく判りません。

ここは今度の総会での勝算の有無で評価するよりも、今後のボーナス制度再検討への基礎的な布石として把握するのが妥当かと思われます。

なかでも、日本の追加提案に付記されている、提起理由の部分には、普遍的な説得力があると思われます。

「それぞれの時代にあって、より難度が高い内容を思い描きこれに挑戦することは、フィギュアスケートが競技である限り、選手にとって普通の考えに違いない。 フィギュアの発展のために、競技の規則はその心意気を支え、難しい挑戦が成功した場合にはこれを適切に評価するものでなくてはならない。」

これが ISU のコミュニケに載っていることに、頼もしさを感じました。 選手を鼓舞し、チャレンジを促す方向でのルール改正が、フィギュアスケートという競技そのものへの注目、関心を集め、そのさらなる発展に寄与するものであることは、まちがいないだろうからです。
 
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2010年05月13日

ISU 1611の概観 (その2 〜ステップ、スパイラル、スピン)

その1 からの続き>

スピンについては項目が多く、煩瑣な記述にならざるを得ないため、ISUの記載順には従わず、エントリーの最後のほうに ご紹介します。

[ステップシークエンス]

☆ レベル獲得の要件のうち、項目の選択肢は1つ増えたものの、必須項目の達成条件が厳しくなったり、ターンの組合せによる選択要件が難しくなったりしています。
全体にレベル獲得条件が難しくなったのかどうかは、微妙な感があります。

K)
レベル必須要件である、ターンおよびステップの多様性/複雑性のうち、ターン(*) に関して要求数
   「やや多様(レベル2)」について 6つ から 7つ に、
   「多様(レベル3)」について 8つ から 9つ に、
それぞれ1つずつ増えました。
<(*) スリーターン、ツイズル、ブラケット、ループ、カウンター、ロッカー>
繰り返せるのは、各種類それぞれ2回までである点は変りません。

L)
レベル要件の選択肢である上半身の動きについて、全レベルについて統一内容となり、 同時に、内容自体が特定され、
「体幹(body core)のバランスを左右するような、かつ 目に見える、腕・頭・胴 の動きであって、その合計がステップシークエンスの軌跡全体の 2/3 以上になるもの」
と表現されました。

M)
レベル要件の選択肢が1つ増えました。 その内容は、
軌跡の半分以上を片足で行う」 というものです。

N)
「ターンおよびステップによる回転方向の素早い転換」 となっていたレベル要件の選択肢が
難しいターン(ロッカー、カウンター、ブラケットまたはツイズル)の組み合わせを、すばやく、そして両回転方向に、シークエンスの中で少なくとも各回転方向につき2回実施
となりました。

O)
レベル1 と 2 において、GOE−3の実配点が −1.0 でなく −0.9 となりました。


[スパイラル]

P)
スパイラルシークエンスは ベースバリュー(BV) が一律 2.0 となり、「Choreo Spirals」 と命名されました。
これは、来月の総会に向け ISU 自身が提案している内容と呼応しています。
(名前自体は 「演技構成要素としてのスパイラルを指し、つなぎ演技のそれとは区別」 という意味ではないかと想像されます。)
加減点は GOE+33.0 から GOE−3=−1.5 まで分布。

BV は従前の レベル1と 2の 中間くらいである反面、GOEのプラス側(加点側)がたいへん大きくなっています。

なお、「Choreo Step Sequence」というのも創設されていますが、こちらは男子FSの2つめのステップシークエンスもレベル設定が廃棄される という総会提案との整合を図るものと理解されます。


[スピン]

☆ レベル獲得要件の選択肢の数は変らないものの、そのうち6つが変更、5つが難しい方向の改変であり、さらにその他の特記事項も条件がきつくなっているので、たいへん厳しい内容になった感があります。

(注:以下で「基本ポジション(基本姿勢)」とはシット、キャメル、アップライトのこと。 レイバックやビールマンはアップライトの変種、「ポジション(姿勢)」とはこの3つに中間姿勢を加えたもの。)

Q)
レベル要件の選択肢「2」の「基本ポジションでの 別の難しいバリエーション」において、最初の姿勢バリエーションとの差を明確にすることが強調されました。

足換えのある単独スピンの場合は、最初のとは逆の足になってからの、かつ最初のとは別の難しい姿勢バリエーションであること
足換えの無いコンビネーションの場合は、最初の難しい姿勢の時とは異なる難しい姿勢バリエーションであること
足換えのあるコンビネーションの場合は、最初のとは逆の足になってからの、かつ、最初のとは異なるポジションでの難しいバリエーションあること

(旧シーズンはあった、足換え無しの単独スピン内での2番目の難しいバリエーションの工夫は、レベル要件からは外れました。)

R)
レベル要件の選択肢「3」が、旧 「難しい足換え」 から、新たに 「ジャンプによる足換え」 と内容が特定されました。

S)
選択肢「5」の 「一つの基本姿勢での明確なエッジの変更」 が、次のように限定された場合にしかレベル要件としてカウントされなくなりました。
−シットスピンで バック・アウトサイド から フォア・インサイド へエッジ変更した場合
−キャメルスピンでエッジ変更した場合

T)
選択肢「6」の文言が、意味のある部分だけを抽出して 「全ての基本ポジションを両方の足で達成」した場合、となりました。

U)
選択肢「7」の 「ただちに続けて行う両方向のスピン」 が シットスピン または キャメルスピン にだけ適用されることになりました。

V)
レイバックスピンでのレベル要件である 「バックからサイドまたはその反対に1回の姿勢変更。各姿勢少なくとも3 回転。」 について、このレイバックがコンビネーションスピンの一部であった場合にも要件を満たすのみならず、1つのアップライトスピンの姿勢変化の中で行われた場合も(当然ながら)認められることが確認されました。

W)
バックエントリーのみならず、エッジの変更、難しい姿勢バリエーションのそれぞれ、これらのいずれについても、1つのプログラム内においては、最初の1回のみしか、レベル獲得要件として計算されないことになりました。
(注: 内容の異なる 「難しい姿勢バリエーション」 はそのプログラムで初出の時は、計算されます。)

X)
足換えを伴うコンビネーションスピンでは、基本ポジション3つを全てを含むこと」 が、旧シーズンでは SPでのレベル2〜4、FSでのレベル4 の必須要件でしたが、
新シーズンでは、SP、FS、ともに レベル2〜4獲得の必須条件となりました。

また新たに、「足換えのある単独スピンでは、どちらの足でも最低1回の基本ポジション」というのが、SP・FS ともにレベル2以上を獲得するための必須条件となりました。

Y)
さらに、「足換えを伴うスピンでは、一方の足で獲得することができる項目の数は最大3個である。」
「最大2個」 に変更になりました。

Z)
SOV にて、スピンの GOE−3 の減点実数値が −1.0 から −0.9 に緩和されました。



・・・
これらの改変がどのような変化となって実際の演技に現れてくるか、想像が追いつかない部分があります。

しかし、仮にもし、字面の印象どおりに スピンやステップでレベルが獲得しにくくなるのだとしても、その分、GOE やPCS の獲得に各選手・コーチのエネルギーが向けられるのではないかとも考えられます。
GOE加点表は旧シーズンのままですし、PCSのガイドラインは変更の発表が無いからです。

ISU議案の、スパイラルのSPでの廃止や FSでの固定レベル化も、その GOE や PCS への全体的傾倒、つまりは演技ジャッジへの依存度が いっそう大きくなることを示していると考えて間違いなさそうです。

反面、報道されているように、高難度のジャンプが優遇されるのも確かなことのように思われます。

その双方を感じる中、今回のコミュニケが、各スケーターの個性を発揮しやすくする変更、スケーター間で同じ内容が繰り返されることが少なくなるルール変更、そういうものであることが シーズンが進むにつれて判明することを願いたいと思います。

皆様からも、気づかれた点など、ご指摘頂ければ幸いです。
 
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2010年05月09日

ISU 1611の概観 (その1 〜ジャンプ)

ISU は 6日に、4日付の コミュニケーション 1611 を発表し、7日夜、日本でもいくつか報道がありました。
 
この 1611 は何の発表かと言うと、
   1) 一昨年のコミュニケ 1494 の Scale of Value (SOV、各演技エレメントの価値尺度表)の改訂
   2) 昨年のコミュニケ 1557 の レベル獲得条件表改訂
   3) 同 1557 の Grade of Execution (GOE)の減点表改訂
そして、
   4) 同 1557 の GOE 加点ガイドラインのそのままの継続、であり、
新しい 2010‐11 シーズンから適用されるものです。

2)は テクニカルパネル(技術審判員)が、
3)と 4)は ジャッジ(演技審判員)が、それぞれ依りどころとし、
これらの 採点集計上の実点数が 1) となります。

そして、これは一つ前のエントリーでご紹介した コミュニケ 1609 (ISU総会議案書)のルール変更案とは異なり、ISUルール353 の「運用」ということで 加盟国の採決を通さず、ISUが直接発行する形をとっています。
ただし一部に 総会議案との連動があるので、今年は例年と異なり、総会後、6月後半の発効になるのではないかと想像されます。

<なお、フランスがこうした SOV等を 「運用」でなく ルール353 に包含させ、審議の対象とするよう、今回の総会に 議案161 として提起していますが、仮に採用されても、その次のシーズンからになると思われます。>



さて、ニュースで強調されていた内容は、今回の変更の一部にとどまりますので、以下、簡単に概観を試みたいと思います。

全体的にまず言えそうなのは、今回の改定が、テクニカルパネルの判断を減らし、演技ジャッジの判断を増やす方向にありそうだ、という点です。

[ジャンプ関連]

☆ 来シーズン、テクニカルパネルが ボーダーラインのジャンプを、悩まずに 回転不足扱い(BV7割)にする という可能性、 あるいは今回の文言 「離氷 および/または 着氷」 の読み方しだいでは、これまで以上に1段階ダウングレードを選手が取られやすくなる可能性も、考えられなくはありません。

2Aの反復の抑制と、高難度ジャンプ挑戦の奨励を、基礎点数から読むことができます。

行きすぎた加点の抑制、また高難度ジャンプ失敗のリスク軽減も同様に読み取ることができそうです。


A)
ジャンプの 離氷 および/または 着氷 において 意図した回転数より 1/4回転を超え 1/2未満 の(合計?)不足の場合は 「回転不足(UR)」として扱われ、その 「<」 マークは 演技審判の採点にあたり開示されます。
ベースバリューは 0.7倍 扱い。
GOE は +、−、ともに もともと意図したジャンプのものを適用し、 「<」による GOEマイナスは −1〜−2、 ただし 最終GOEは自由。

B)
ジャンプの 離氷 および/または 着氷 において 意図した回転数より 1/2回転以上 の(合計?)不足の場合は 「ダウングレード(DG)」として扱われ、その 「<<」 マークは 演技審判の採点にあたり開示されます。
ベースバリューGOE、ともに 意図より1回転下のジャンプとして扱われます。
「<<」による GOEマイナスは −2〜−3、 そして 最終GOEはマイナスが義務付けられます。

C)
上記A)、B)、ともに意図した元のジャンプとして、Well Balanced Program の規定にて、扱われます。
<そのように あえて特記してあるので、ルール 512 全体、つまりザヤック等の規定でもこのように扱われるとも理解できます。>

D)
SOV配点表で、各ジャンプの評価が調整され、ジャンプでは
ダブルのもの 特に 2Lo と 2Lz の基礎点(BV)が上がり、 2Aが下がり
トリプルでは 3T と 3Lo が微増、3S と 3F が減3Aが上がり
クヮドは全てが かなり上がっています
回転不足(UR)のジャンプもこの SOV に表記されました。
<このエントリーの後ろのほうに、新旧の比較一覧を試みておきます。>

E)
ジャンプの GOE にて、加点(+1、+2、+3)、減点(−1、−2、−3)に対応する実数が大幅に調整され、
ダブルジャンプの  加点実数値が平均して半減、 減点も縮小、
2A も              加点実数値が半減、 減点は25%緩和、
トリプルジャンプは 加点・減点、 ともに3割実数値 縮小 (これまでの七掛け)
3A と クヮド は    加点は変らず、 減点は実数値を縮小して、加点側と減点側が同じになりました。

F)
ロングエッジの 「e」 と 「!」 は、「e」 に統一されて演技ジャッジに伝達、
GOE−1〜−3 の評価や、演技にGOE+要素がある場合もなお最終GOEをマイナスにするべき程度かどうかは、ジャッジ側に任されることになりました。

G)
コンビネーションジャンプ や ジャンプシークエンス においては ハーフループ(後ろ向き着氷) が 1Lo として扱われることになり、その場合は、それ自身がコンビネーション/シークエンスを構成するジャンプの個数に算入されることになりました。      

H)
テクニカルパネルから演技ジャッジに 「<」 「<<」 マークが示されることに戻ったことで、 マークの無い場合にジャッジ側が回転が不足気味のジャンプに付けられる GOE−1 が設定されました。

I)
両足着氷の場合の GOE が 「−2」から 「−3」へと厳しくなりました。 最終GOEのマイナス義務はそのままです。

J)
ステップアウトの場合の GOE が 「−2」から 「−2〜−3」へと厳しくなりました。 最終GOEのマイナス義務はそのままです。



ジャンプのベースバリューの新旧の対応表を、頻度の多い部分について作ってみると、以下のようになります。


ジャンプの種類    2T   2S   2Lo   2F   2Lz     2A     3T   3S   3Lo  3F   3Lz     3A      4S

旧シーズンBV     1.3   1.3   1.5   1.7   1.9      3.5    4.0   4.5   5.0   5.5   6.0      8.2      10.3
新シーズンBV     1.4   1.4   1.8   1.8   2.1      3.3    4.1   4.2   5.1   5.3   6.0      8.5      10.5
    同 「<」 BV     1.0   1.0   1.3   1.3   1.5      2.3    2.9   2.9   3.6   3.7   4.2      6.0       7.4
旧シーズン                                        |              |                               |               |
GOE-3〜+3              -1.0〜+1.0          |-2.1〜+3.0|        -3.0〜+3.0        |-4.2〜+3.0| -4.8〜+3.0
新シーズン                     |                 |               |                              |
GOE-3〜+3     -0.6〜+0.6 | -0.9〜+0.9 |-1.5〜+1.5|       -2.1〜+2.1        |       -3.0〜+3.0


☆ ちなみに、3Lz+3Lo のコンビネーションジャンプは、ISU総会議案 183 が恐らく可決されるとすれば、その得点は次のようになります。
    (セカンドジャンプが「<」マーク付になった場合も併記します。)


旧シーズンBV          11.0  これにGOE、計 8.0〜14.0

新シーズンBV          12.2 (BVの合計11.1の 1.1倍) 11.1 これにGOE、計 10.1〜14.3 9.0〜13.2
                             <注:8月公表の Special Regulations において、BVの1.1倍化が否決されたことが判明>

旧シーズン「Lo<」     7.5 これにGOE、計 4.5〜8.5(〜10.5)

新シーズン「Lo<」     9.4〜9.9 8.2~8.9 (BVの合計 9.6の 1.1倍に、「<」のマイナスGOE「-0.7〜-1.4」)
                                      これに他のGOE、計 8.7〜11.3(〜12.0) 7.5〜10.3(〜11.0)
                             <注:8月公表の Special Regulations において、BVの1.1倍化が否決されたことが判明>

その2 へ続く>
 
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2010年05月02日

来シーズンのルール変更の方向性 〜女子SPスパイラル廃止・他〜


来る 6月12日から 20日に開催される ISU 定期総会の議案書が、202ページに及ぶ コミュニケ1609 として29日付で30日、発表されました。
 
http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=1859
 
この中には、予想せざるルール改正案がたくさん記載されていますが、その中でも ISU の理事会や専門委員会からの提出案件は、(加盟各国からの案と違い) 議案の段階とは言え、ISU総会における審議プロセスの規定から考えても、可決実現が濃厚であると思われます。
 
以下、フィギュアスケート女子シングルに関係のある主要議案について、その ISU 自身の提案を中心として、ここに現時点での概観を試みてみたいと思います。
 

 
< ISU提案のうちの注目項目、 重要度順ではなく 議案番号順 >
 
議案43 : (要点概訳、以下同じ)
7月1日時点で15歳以上に達している選手は、シニアの競技に過去のシーズンを含め2回(ただしGPシリーズはシーズン全体で1回と数える)参加した時点で、ジュニア競技への参加資格を失う; フィギュアでは、ジュニアの年齢制限を同13歳以上18歳未満に変更、ジュニア世界選手権の参加資格を同14歳以上、シニアGPFの参加資格をあらたに同15歳以上とする、などの提案。
 
議案48 :
国籍を変更した選手の登録申請について、規定上の用件をクリアしていても、ISU理事会はこれを審議の上で拒否できる権限を持つことを新たに提案。 選手の「輸入」による安易な国家代表補強は ISUルール109の目的にそぐわない、という理由。
 
議案63、議案211 :
フィギュア競技(SP・FS)のスモールメダルを廃止する提案。 一般大衆にとって紛らわしく、また、SP、FS それぞれは個別競技ではない、という理由。
 
議案183 :
コンビネーションジャンプ(ジャンプシークエンスではない)のベースバリューを 1.1倍にし、GOE は難しいほうのジャンプの数値で全体を採点するという提案。  個別ジャンプよりも難度が高いという理由。
 
議案189 :
衣装(および小道具)規定違反の減点を−3とし、衣装等の一部が氷上に落ちた場合の減点を新たに−1とする、という提案。 観衆の注目が演技よりも衣装に集まることを防止する、という理由。
 
議案266 :
コンビネーションジャンプやジャンプシークエンスにて、ハーフループにループのベースバリューを与える、という提案。
 
議案268 :
シニア女子のショートプログラムにて、スパイラルを必須要素から外し、演技要素を計7に減じる、また、必須要素のアクセルジャンプは2Aでも3Aでも良い、という提案。
 
議案269 :
この議案268のうち、女子シングルについては、 上記3Aが演じられた場合は コンビネーションジャンプの中には3Aは入れられない、 ステップシークエンスの中ではレベル表に無いジャンプは自由に演じられる、 スパイラルが演じられた場合はつなぎ(Transition)として扱われる。 
 
議案270 :
フリープログラムにおいては、2Aはシングルジャンプ・コンビネーションジャンプ・ジャンプシークエンスのいかんに係らず、計2回までしか演じられない。
また、スパイラルは3秒以上姿勢を保持した2つのポジション または 6秒以上保持した1つのポジション以上で構成されねばならず、これを満たさない場合は点数が与えられず、また満たした場合はレベル段階の無い固定されたベースバリューのみ与えられ、評価はGOEで定められる。
 

 
<加盟国(個別連盟)による提案のうちの注目項目、 重要度順ではなく 議案番号順>
 
議案59(日本提案) : (要点概訳、以下同じ)
ヨーロッパ選手権 あるいは 四大陸選手権に出場した選手は、世界ジュニア選手権には出場資格を無くす、という提案。 ジュニア選手の健康に配慮し、日にちの接近による過大負担を避けるという理由。 「賛成しない」という理事会意見が、議案43の中に同じ精神の提案があることを理由に、付いている。
 
議案163(オーストリア提案)、議案164・182(カナダ提案)、議案165(ロシア提案)、議案166(米国提案) :
ジャッジの採点のうち無作為抽選で2人分を不採用とする現行方式をやめる提案。
オーストリア案と米国案は最高と最低の採点の不採用は現行どおり、カナダ案は主要大会で最低9名および審判団の大きさに応じた最高と最低の不採用数の調整、ロシア案は9名の全採点の採用と補欠ジャッジの必要を主張、米国案は9名でなく12名および補欠を主張。
 
議案185(デンマーク提案)、議案186(フィンランド提案)、議案187(ノルウェー提案)、議案188(スウェーデン提案) :
ショートプログラムで、2分経過以降のジャンプのベースバリューを 1.1倍とする提案。
 

 
その他 ISU からは、ISU選手権における 下位選手の予選(Qualifying Round)の実施や、参加資格としての最低得点経験が提案されていたりはしますが、安藤選手ほか、日本の女子シングル選手に影響のある提案は、上記の中にあるものが主要であると考えられます。
 
スパイラルのショートプログラムでの必須要素からの除外は、一昨シーズンのFSでの必須スピンの減少と同様、つなぎ(Transition)重視の表れであることは間違いないでしょう。 実際、これまでの現実のジャッジングの傾向もそうなっていると思われます。
ステップシークエンスでの、リスト外ジャンプの採用自由化ともども、演技そしてスケーティング自体の巾を確保するものであると同時に、体力的には要求度が上がっているとも考えられるのではないでしょうか。
 
これらの提案がそのまま実現されるかどうか、総会のゆくえが注目されます。
 
皆様はどうご覧になるでしょうか。
 
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2009年05月05日

新シーズンのルール変更(ISU 1557) 〜その実際は〜

欧州時間 4月15日付で告知された ISUコミュニケーション 1557。
内容は新シーズンに向けてのルール変更で、6月1日に発効、以降の公式試合に適用されます。
http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=1427
 
今後も追加のコミュニケが出ることもあり得るかもしれませんが、少し前までは 08/09 シーズンのルールのまま五輪を迎えるという情報もあったことを考えると、この1557が 年度適用の全貌に近いかと思われます。
 
今回の改正、日本のWEBニュースやテレビ等でも既に、ジャンプの回転不足についてのいわゆる二重減点の是正として解説されています。
しかし その内容の実際は、それ以外にも多岐に渡るので、その概要を4本柱にまとめて、以下に かいつまんでおきたいと思います。
< 内容について、誤謬がありましたら、諸兄諸姉のご指摘を賜りたいと存じます。>
追記 : 5月11日付で、日本スケート連盟版の和訳が公開されました。
             http://www.skatingjapan.jp/jsf/News/comm1557J.pdf
 
テクニカルパネル、演技ジャッジ、それぞれの領分に分けて考えると良いかと思われますが、それに際しては 12月20日のブログエントリーもご参照ください。
http://miki-ando-and-fans.seesaa.net/article/111458479.html
 
 
■ [T]  テクニカルパネル(TP)と 演技審判団(ジャッジパネル、JP)とによる二重減点の回避
 
今回、演技審判によるGOE(Grade of Execution)の判定において、ジャンプについては URマーク(<)がTPから開示されない状態、しかもスローモーションが示されない状態で、JP独自になされることになりました。
採点の独自分担を進める方向としては この他 :
スパイラルの姿勢保持時間は、TPによるレベル判定のみの対象とし、ジャッジは考慮に入れないことになりました。
逆に、スパイラル中に フリーレッグが既定のヒップレベル以下に一旦落ちてから戻っても、TPはそれでポジションの回数増減をとらない、JPによる演技の質の採点に任せる、と記されました。
 
wrong edge (eマークや!マーク)については、TPによるレベル減価がもともと無く、従来どおりジャッジパネルに示されますが、「e」と「!」のJPでの扱いが指定され直しました。 どちらも後述のように GOEマイナスが付き、「e」については最終GOEのマイナスが義務付けられました
 
TPにより価値(レベル)無しと判断された演技要素についてはしかし、これまでどおりTPの判断が優先、JPに伝達され、TESの計算からも除外されます。 その例として、スパイラルシークエンスで 3秒以上持続するポジションが一つしかなかった場合は レベルがゼロ、つまり配点ゼロとなる、とあります。
 
 
■ [U]  TPによる エレメントの認定やダウングレード等のコールに関する改変
 
ISU コミュニケ 1494 の10ページ以降にあった、TPのためのレベル判定基準の表が1557の中で改正・更新され、 08/09 シーズンに比べての変更点がアンダーラインで示されています。
 
【1】 TPによるジャンプの判定、ダウングレードやエッジコールは従来どおりです。
 
【2】 ステップのレベル獲得要素のうち、方向転換について、「ターンおよびステップによる」という表現となり、例示が無くなりました。
<解説部分では「ランニングステップ」がステップの種類として加えられました。>
 
【3】 スパイラルのレベル獲得要素のうち、2つめの「難しい姿勢」が有効要素となるためには、脚替えをしただけではだめで、別の難しい姿勢が脚替えと同時に必要なことが明記されました。
 
【4】 スピンのレベル獲得要素については、誤解を避ける表現に直したほか、レイバックスピンについての特典付加条件を、コンビネーション内のレイバックについても適用としました。
脚替えのあるスピンについては、片方の足ごとに、得られるレベル獲得要素の最大が3となりました。
<解説部分では、シットスピンの深さが厳しく定め直され、これまでに加え「スケーティングレッグ(支持脚)の膝上部分が最低でも氷面と並行」と書き加えられました。
また、エッジ替えについては、基本姿勢の場合のみ有効要素となるのに加え、新たに、そのために各エッジで最低2回転が必要なことが再確認されました。
さらに、バックエントランスとビールマンについて、有効要素としてカウントするのは、SP・FSともに1回のみとし、複数回なされた場合は最初のものだけを有効とすることになりました。 ビールマンは旧シーズンでは2回有効だったのが1回に減ったことになります。>
 
 
■ [V]  演技審判員(JP)側でのTES減点に関する改変
 
ISU 1494 のGOE減点表は、ISU 1557の中で改正・更新されました。
表現が整理され、左半分が最終GOEがマイナスであることが義務づけられた演技ミス、右半分がその義務の無い演技ミス、という表示になりました。
また、シングルジャンプと ジャンプコンビネーション・シークエンスとがひとまとめにされるなどして、「ジャンプ」「スピン」「ステップ」「スパイラル」に分類が整理されました。
 
ジャンプ関連:
 
【1】 前述のように、回転不足でダウングレードに至ったジャンプにつき最終GOEのマイナス義務が無くなりました
ダウングレード自体がJPの採点に際し、知らされません。
各ジャッジは回転不足と判断した場合、程度に応じ、−1から−3のGOEとします。
ジャンプの他の側面が加点に値すれば、最終GOEが+2 となることもあり得ます。
 
【2】 「e」マークの不正エッジのテイクオフについては、GOEは−2か−3、最終GOEのマイナスが義務づけられました。
「!」マークの曖昧エッジのテイクオフについては、GOEは−1か−2、最終GOEのマイナス義務はありません。
 
【3】 「スピード・高さ・飛距離・空中の姿勢が劣っている場合」が新設され、GOEが−1から−2 となりました。
 
【4】 コンビネーションジャンプにおけるセカンドジャンプでの転倒は、GOEが−2から−3になりました。
 
【5】 コンビネーションジャンプにおける「ジャンプ間のリズムの欠如」という項目が廃止されました。
 
【6】 ショートプログラムで、必須回転数に満たない場合の最終GOEマイナスが義務づけられました。
 
【7】 ショートプログラムで、必須コンビネーションが単独ジャンプに終わった場合の最終GOEマイナスが義務づけられました。
 
【8】 補足説明部分に、ISU1494の時からあった「テイクオフが劣っている」という GOE減点項目の、具体的演技エラー例として、体が前を向いてしまうような(*)プレローテーションや、トー・ジャンプなのにフルブレードを氷につけてのテイクオフ、というのが新たに挙げられています。

<* アクセルでは後向きに至るような>
<* ISUによる 「Cheated take off」の定義は 「First Aid」によれば、
「明らかな前向きの離氷(アクセル以外の例)」となっており、
「トーループで最もよく見られる」「TP は cheat離氷 の認定やダウングレードに際し、通常速度のリプレイしか見てはいけない」等の説明があります 。 *印は 6月11日 追記>

 
スピン関連: 採点項目が整理・合流されて減りました。
 
【9】 フライングスピンにおける転倒が、他のスピンに統一されて最終GOEマイナスが義務づけられました。
 
【10】 既定回転数に満たない場合のGOEが、旧「−1〜−3」から 新「−1〜−2」となりました。
 
【11】 ショートプログラムでは逆に、既定回転数に満たない場合のGOEが、旧−2 から 新−3 となりました。 最終GOEマイナスの義務は変わりません。
 
 
ステップ関連:
 
【12】 「速度が遅い」という項目が無くなり、「ステップ・ターン・ポジションが劣っている」という項目ができました。
 
【13】 「正しくない軌跡」についてはショートプログラムのみの適用となり、GOEも 旧「−1〜−3」から 新「−1〜−2」となりました。
 
 
スパイラル関連:
 
【14】 「ポジションが軌跡の半分以下」の場合のGOEが 旧「−1〜−3」から 新「−2〜−3」、かつ最終GOEマイナス、と厳しくなり、また、実例があったのか、「転倒」が最終GOEマイナスにて新設されました。
 
【15】 「姿勢が劣っている」「つまづき」「エッジの質が低い」という3項目が演技ミスとして新設され、スパイラルの採点は新年度から全体に厳しくなるのかも知れないと感じさせます。
 
 
■ [W]  演技審判員(JP)側でのTES加点に関する改変
 
ISU 1505 「プラスGOE 採点ガイドライン」も、ISU 1557の中で改正・更新されました。
 
加点GOEの判断項目が各演技で旧6から新8に増設された一方、推奨基準が次のように多少厳しくなりました。
「+1」のための該当項目数 =2 <旧「1または2」>
「+2」のための該当項目数 =4 <旧「3または4」>
「+3」のための該当項目数 =6 <旧「5または6」>
 
増設項目で目をひくのは「ジャンプ」「スピン」「ステップシークエンス」「スパイラルシークエンス」全てに加わった「音楽の作りとの一致」です。 音楽とのシンクロが加点に向けた要素となると思われます。
 
また「楽々と滑りきる」というのがジャンプとステップについて新しく設けられています。
 
さらにはスパイラルシークエンスでの「全体を通してクリーンエッジが持続」というのも目に止まります。
 
全体的に、この加点基準は実質的な重複も散見され、未だ洗練・整合の余地あり、とも言えるかもしれません。
 
 
■ 実際の運用は
 
ISU 1494 の Scale of Value (SOV、基礎点数と対応GOE換算の一覧表) は新シーズンも生きています。
 
ですので、たとえば、トリプルループがダウングレードされてダブルループとして扱われたとしますと、これまでどおり、基礎点は 5.0 から一気に 1.5 に減ります。
 
しかし、ジャッジ側にとって「<」マークもスローモーションも無い新シーズン、旧シーズンの義務的な GOEマイナスからは自由になります
目視状態によっては回転不足をジャッジ側は採らず、他の要素を加味してGOE+3も理論上あり得なくはないかもしれません。(実際はこうした場合+2どまりと想定されます。)
そんな場合はダブルジャンプはSOVの表にて GOEの加点側のほうが配点上 大きいこともあり、旧シーズンより1〜2点 有利になると考えられます。

コンビネーションのセカンドジャンプがダウングレードされた場合などは、特に、全体に対し強制されていた最終GOEマイナスが外されるわけですから、ファーストジャンプの質が正当に評価されやすく、改正の効果はさらに大きくなるはずです。

このように、リスクを初めから回避してダブルにしたほうが点数が得やすい、という現状がかなり改善されるところが重要と考えられます。
 
しかしそのためには、演技審判団に回転不足の先入観が無いことも条件になるなど、実際の運用状況を見ないと、今回の改正の良否はしかし、言い切ることは出来ないかもしれません。
 
4回転ジャンプについて、あるいはスピン・ステップ・スパイラル全般の中から、よく話題になる演技要素を新ルールでトレースしてみることで、色々発見がありそうです。
選手の置かれている状況がファンにも少しは解るのではないか、そんな無謀な想いもついつい抱きます。
 
今回の改正、皆様はどう 読まれますでしょうか。
 
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2008年12月20日

ルールの語る加点・減点 〜審美の算数〜

ここの掲示板に頂いた書き込みの一節に、「演技から受ける観衆の感動は審査対象外で点数に結びつかないかもしれないが、やはり感動を期待する」というご趣旨の、私たちファンにとってはたいへん自然な受け止め方があるのを、共感とともに拝読しました。
そこで、関連するISUの公開資料を一応調べてみましたら、驚くことに次のようにありました。
いわゆる5項目のうちの「Performance/Execution(PE)」に関する記述の中、PEの評価軸の一つです。

投影(プロジェクション):エネルギーを放ち、観衆との目に見えないつながりを獲得しているか。
Projection:The skater radiates energy resulting in an invisible connection with the audience.
ISU Program Components Explanations 2004/07/31から>

つまりルールの文言上は、観衆の受ける感動はPCSのPEの中に反映される・・・感動がスケーターと観衆の一体感の現れに違いない以上、そういう論理になるようなのです。

この小さな驚きをきっかけに、もう一度、(筆者のような)一般のファンにとっても、ISUの採点基準は読むに値するのではないか、 そこに用意されている論理を一応見ておくに越したことはないのではないか、と思いました。
大袈裟に言えば、ファン全体がルールの共通の理解をすることでスポーツが皆のものとなる、審判団の評価にファンとして一喜一憂するにしても、時おり受けるあの「理不尽」な感覚を少しでもぬぐえるのではないかと感じたのです。

さて、ルールに関しては、ここのリンク集にもある「フィギュアスケート資料室」がたいへん詳しいので、そちらも読んで頂きたいのですが、ここではそれを参考にさせて頂きながらも、数項目に絞って、興味深く読める資料のリストアップと、気付いた点の簡単な言及をさせて頂こうと思います。

<下記に関連して読者の諸兄諸姉からのご教示があれば、ぜひお待ち申し上げます。>


■ 主要資料のリスト(URL)

競技とショーを分けるもの、それはある意味、「採点」に集約されるのかもしれません。

フィギュアスケートの採点に関する ISU の諸資料は次の2ページにまとめられています。
・ISU Judging System
  http://www.isu.org/vsite/vnavsite/page/directory/0,10853,4844-152055-169271-nav-list,00.html

前者ではPCSについての2つ、
・Program Components Overview
  http://www.isu.org/vsite/vfile/page/fileurl/0,11040,4844-152077-169293-64120-0-file,00.pdf

後者の中では次の3つが目につきます。
・First Aid for Technical Controllers and Technical Specialists Single
 (言わば テクニカルパネルにとってのアンチョコ)
  http://www.isu.org/vsite/vfile/page/fileurl/0,11040,4844-185270-202492-125742-0-file,00.pdf
・ISU Communication 1494
 (「価値尺度、GOE 採点ガイドラインおよびレベル」)
  http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=934
・ISU Communication 1505
 (プラスGOE 採点ガイドライン)
  http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=981


■ TPによるエレメントの認定やダウングレード等のコール

First Aid には テクニカルパネル(テクニカルコントローラー、テクニカルスペシャリスト、アシスタントスペシャリスト)の領分にからむ各規定が要領良くまとめられています。
ステップシークエンス、スパイラルシークエンス、単独スピン(チェンジフットなし)、単独スピン(チェンジフットあり)、コンビネーションスピン(チェンジフットなし)、コンビネーションスピンスピン(チェンジフットあり)、フライングスピン、単独ジャンプ、ジャンプコンビネーション、ジャンプシークエンス、それぞれについて、「規則」 「解説」 「演技ミスの対処」 の3つがまとめてあります。

たとえば単独ジャンプにおける演技ミス関連では、次のような項目についての処置が書かれています。
・回転不足のコール(着氷が1/4回転以上 早いと1段階下のジャンプにダウングレード)
・正面向きになるまでに及んだプレ回転でのテイクオフのダウングレードのコール
・Wrong Edge コール、「e」マークや「!」マーク
・SPでのジャンプ直前の中止の場合のジャンプ回数扱いのコール
・規定外ジャンプのコール(無得点・回数カウント)
・FSでの3回転や4回転の同一ジャンプが反復された場合の、シークエンス扱いのコール
・いわゆるザヤックにかかるジャンプのコール
・等々

また、ジャンプ以外では、要素とその成立・不成立の認定や、レベルのコール等を行ないますので、GOE評価以外の技術点(TES)評価の大半をテクニカルパネル(TP)が担っていると思われます。

たとえば ステップシークエンスについては、「Level 3」(ベースバリュー 3.3)は次の項目のうちTPが3個認定したもの、「Level 4」(ベースバリュー 3.9)は4個を認定したものです。

1) シークェンス中のターンおよびステップが
   やや多様(レベル2)/多様(レベル3)/複雑(レベル4)である。<必須>
2) 完全に体が回転する両方向(左と右)への(ターン、ステップによる)回転。
   各回転方向とも全体でパターンの少なくとも1/3 はカバーすること。
3) ある程度の(レベル4では十分な)上半身の動き。
4) 続け様に回転方向を転換。
   ロッカー and/or カウンター and/or ツイズル and/or 素早いステップを ただちに続けて転換すること。


■ ジャッジ(演技審判員)側でのTES減点

減点については「Grade of Execution(GOE)」という指標でこれに対処します。

ISU Communication 1494(正文、「価値尺度、GOE 採点ガイドラインおよびレベル」)
http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=934
   同日本語訳
   http://www.skatingjapan.jp/Jsf/News/comm1494J.pdf
の中の、後半のGOE減点表が 基準となっています。

たとえば単独ジャンプについては、

SPにおいて必須回転数未満(ダウングレードではない)  GOE(以下同じ)-3
間違ったエッジでの踏み切り (持続長さによる) -1 〜 -3、必ず-GOEとする
着氷での転倒 -3、必ず-GOEとする
両手がタッチダウン -2、必ず-GOEとする
ダウングレード(回転不足=UR) -1 〜 -3、必ず-GOEとする
片手またはフリー・フットがタッチダウン -1
1/4 回転までの回転不足(ダウングレードではない) -1 〜 -2
長い構え -1
踏み切りまたは着氷が両足 -2, 必ず-GOEとする
下手な踏み切り -1 〜 -2
着氷でのステップ・アウト -2, 必ず-GOEとする
拙い着氷 (トウ、不正なエッジ、など) -1

などとなっていて、演技審判員(ジャッジ)がこれを判断します。

なお、ここでいう「-1」はGOEでの1段階減を言い、具体的な減点はエレメントごとに
別途、価値尺度表に定められています。
たとえば 同じ「GOE−3(GOE−−−)」であっても、
ダブルアクセルのそれは採点が−2.1 であるのに対し、
トリプルジャンプはアクセルを除き 採点−3、
トリプルアクセルでは−4.2、4回転ジャンプでは−4.8、・・・となります。

上記「価値尺度表(SOV)」は、この Communication 1494 の前半にあり、
ジャンプの点数の他、スピン、ステップシークエンス、スパイラルシークエンスの各レベルごとの
基礎点数(ベースバリュー)、そしてそれぞれについて GOE +3 〜 −3 に対応する配点が一覧表になっています。

<なおテクニカルパネルの領域ですが、このコミュニケの最後に、レベル(Lv1〜4)獲得の必要条件がまとめてあります。>


■ ジャッジ側でのTES加点

加点についてはこちら。
   同日本語訳
   http://www.skatingjapan.jp/Jsf/News/comm1505J.pdf

たとえばジャンプについては、次の6つの指標のうち、1〜2項目該当でGOE+1、 3〜4項目該当でGOE+2、 5〜6項目該当でGOE+3 を推奨、としています。(以下 正文から和訳)

1.ジャンプの入り方が次のいずれか:意外性がある/独創的/難しい
2.直前にはっきりとしたステップや演技要素がある
3.空中での姿勢の工夫(変形)/ゆっくりした回転
4.ジャンプの高さや距離が大きい
5.着氷が良く伸びている/独創的である
6.ジャンプの入りから出まで流れが優れている(コンボやシークエンスではその途中も)

ステップシークエンス、スパイラルシークエンス、スピン、それぞれについても 6つの指標があって、
全体で(シングル分野に対し)1ページにまとめられています。
しかしその「推奨」という表現ゆえに、ジャッジの主観の余地を あえて大きく残してあるかのように、読んで感じられる方々も おられるかもしれません。


■ ジャッジ側でのPCS採点

スケーターの得点の約半分を占める Program Component Scores (PCS)。
今シーズンはISUの方針なのか、PCSがTESにさほど連動しない傾向が感じられ、またそうであれば、採点システム全体の主旨からすれば本来的なことかとも思われます。
10月末にはジョアニー・ロシェット選手が自らのホームページで、シーズンに向けての成績改善の究極のターゲットとしてこのPCS対策を徹底的に練ってきた旨、語っていましたが、その成果の大きさからもこの配点ジャンルの重要性が判ります。

前記のとおり、2つのファイルが そのガイドラインとなっています。


この PCS のいわゆる「5項目」
   SS(Skating Skills スケーティング技術)
   TR(Transitions/Linking Footwork & Movement 要素間のつなぎ)
   PE(Performance/Execution 演技力/実施能力)
   CH(Choreography/Composition 振付け/構成)
   IN(Interpretation スケーティング上の曲の解釈)
について、別ウィンドウにて新たに独自の日本語訳を試みてみました。(ここをクリック

いずれの項目のガイドラインも内容が抽象的なのですが、お読み頂けるように、PCS採点の目途を それなりに表現し尽くそうとしたもののように思われます。

<なお、2003年ごろは10点満点評価の各段階ごとの説明文が公開されていたようで、一例として「PE」においては、「4」の内容に巻き足の例示があったり、「7」までの段階ではスピードの変化のコントロール能力の程度を指標としていたりしたようですが(フィギュアスケート資料室の該当資料)、現在はISU公開資料の中に見当たりません。>


これらのガイドライン、特にGOE加点やPCSのそれは、審査の客観性を担保しているわけではなく、むしろ、主観的な採点を不可避の宿命としつつも、それぞれの評価各要素をさらに細分化してみせることによって「目配りの丁寧さ」を確保するのが、一番の目的のようにも読めます

そして、この採点システムの多岐に渡る「審美の算数」が、審査員団という「主観の束(たば)」に 素朴に依存している、まさにそのことこそが、競技としてのフィギュアスケートの喜怒哀楽に満ちた魔性の魅力をはからずも醸し出している、・・そう考えることもできるかもしれません。

・・・
皆様はどのように読まれるでしょうか?

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2008年07月03日

ISU コミュニケーション 1504 1505

昨日、ISUは公式ホームページに、ルールに関する6月の総会決議の要点をまとめたコミュニケと、GOE採点の新ガイドラインのコミュニケを発表しました。
1) ISU Communication 1504
http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=980
2) ISU Communication 1505
http://isu.sportcentric.net/db//files/serve.php?id=981

1)
1504のうち、女子シングルについては、29日に当ブログにエントリーした内容が主ですが、コミュニケ第四章に「Wrong Edge」の採点手続きが表記され、厳しさが消えた印象です。
その第四章の要旨は、
「長い Wrong Edge、あるいは正しい踏み切りエッジの全く見られないもの」にはテクニカルパネルが「e」マークを付け、これはジャッジがGOEから-1ないし-3と、減点せねばならず、またその合計GOEもマイナスでなければならない。
「短い Wrong Edge、あるいはWrong Edgeがあまり目立たないもの」にはテクニカルパネルが「!」マークを付け、これは各ジャッジがそれぞれ採点を自由に判断する。

シングルに関する要点としては、
・競技者は名前が呼ばれてから1分以内に競技を開始しなければならず、これを超えると棄権と見なす。
・怪我、体調、衣装や靴などが原因で中断する場合、3分以内の再開とし、2点減点とする。
・ジュニア男子のフリープログラムではステップシークエンスは最大1回。
・ジュニア女子のフリープログラムではステップシークエンスは最大1回、かつ、スパイラルシークエンスは無し。  <注:ショートプログラムと逆>

その他の関連項目、ペアに関する記述、審判や運営に関する記述はご紹介を割愛させて頂きます。
第三章は、4月末に出た採点表の補足説明となっています。

2)
1505は、プラス側のGOEについてのガイドラインとなっていて、ジャンプ、ステップシークエンス、スパイラルシークエンス、スピン、それぞれについて判定基準を設けています。
たとえばジャンプでは
1.エントリーが意外/独創的/難しい
2.直前にはっきりとしたステップや演技要素がある
3.空中での姿勢の工夫/ゆっくりした回転
4.ジャンプの高さや距離が大きい
5.着氷が良く伸びている/独創的である
6.ジャンプの入りから出まで流れが優れている(コンボやシークエンスではその途中も)
という6つの指標を設け、
推奨GOEとして 指標1〜2項目該当でGOE+1、 3〜4項目該当でGOE+2、 5〜6項目該当でGOE+3、 としています。
 
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2008年06月29日

2008〜09シーズンのルール変更点

さながら恒例行事の様相を帯びてきたフィギュアスケートのルール変更・・。
 
昨シーズンは、ジャンプ踏み切りエッジの使い分けに対する審査基準が厳しくなり、安藤選手も苦労の末、フリップの修正に成功されたことを、皆様ご存知と思います。
減点覚悟で「Wrong Edge」のまま試合に臨んだ選手が多かったなか、これは安藤選手の快挙といえるでしょう。

さて、2008〜09シーズンも、若干の変更があります。
 
既に4月末に Communication No.1494 が出されていて、その中で、エレメントごとの点数表やGOEの基準表が改正されています。
たとえば、トリプルアクセルや4回転ジャンプの配点が高くなりました。
 
そしてこの6月のISU総会でも、これまでのルールの明確化や整理の他に、いくつか注目すべき変更点が新たにありました。
 
その一番大きなものは、シングルのフリープログラムにおけるスピンの演技回数が、4回から3回に減ったことです。

要は、プログラムに時間的余裕を与え、その分、エレメント間のつなぎの部分の充実度、基本的なスケーティングの美しさやエッジスキルをこれまで以上に評価の対象とする、ということでしょう。
ISUのホームページにも趣旨説明として、
「reduce the required elements in the free program to allow increased innovation」(必須エレメントを減らすことで(演技の)工夫考案を促す)
とあります。

女子シングルに関係する注目変更点の概要は:
★1つのプログラムの中で、スピンは上記のように演技3回を最大とし、うち1つはコンビネーションスピン、1つはフライングスピン、1つは単独スピンとすることになりました。
(つなぎ要素充実目的の旨は、議案書にも記されています。)
★スピンの途中で転倒した場合は、エレメント数・点数としてカウントされなくなります。
演技の流れを保持するために再開しても良いが、点数は付かないようです。
★ステップシークエンス中にジャンプを加えても良いことになりました。
★何がしかのジャンプの直後にアクセルを跳んだ場合、これまでは単独として別に数えましたが、これからはジャンプシークエンスと見なされます。
★コンビネーションジャンプとジャンプシークエンスにおける点数計算方法が多少変更されました。
 
 
以上のように、今回のルール変更は、フィギュアスケートの美しさ、芸術性の向上に寄与する方向である一方、 ミスに対しては(下記参考項目のように)さらに厳しくなるため、苦しむ選手も出てくるかもしれません。
 
しかし安藤選手の場合、ご自身の今後の課題とされていることと、今回のルール変更の方向性とは、図らずもシンクロしているとも思われます。
新ルールが安藤選手にとってプラスとなること、また安藤選手の魅力をさらに引き出す触媒となることを、ファンとしてはぜひ期待させて頂きたいと思います。

以下もご参考まで。

今回のISU総会決議の多くを占めた、これまでのルールの表現明確化・厳格化の例:
★シニア女子SPのコンビネーションスピンにて、3つの基本ポジション(ポジション変化2回)かつ各2回転以上、 チェンジフット(*)必須かつ1回のみであることを規定、 中間姿勢は回転数に入れるが姿勢変化としては数えない。
(*)チェンジフットはその前後とも3回転以上を要し、これを満たさないとそのスピンは無効。
★単独スピン/フライイングスピンにおいて、中間姿勢は回転数に入れるがレベル認定には寄与しない。
★中間姿勢でのチェンジエッジは無効。
★3つの基本姿勢のどれかが無いスピンはレベルも点も与えられない。
★最後の集中回転は要求回転数の計算に加えない。また3回転に満たない場合、姿勢数としてもカウントしない。
★スピンの回転軸がチェンジフットの前後で明瞭に移動した場合、後半のスピンは無効とし、レベル認定を与えられない。 ただしスピンの演技数としてはカウントされてしまう。
★単独レイバック/サイドウェイズスピンは8回転が必須。8回転以上に及べばビールマンポジションを入れて良く、またその場合のみ、レベル認定に寄与する。
★ステップシークエンスは音楽を反映したものでなければならない。またGOE採点も同様。
 

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2008年06月14日

欧米コーチ達の提案

少し古い話題ですが、5月なかごろ、欧州と北米ほぼ半々からなるフィギュアスケートコーチのグループが、国際スケート連盟(ISU)のテクニカルコミッティーに、半年を掛けて練り上げたとする、21項目に及ぶ共同提案をしました。
 
Proposals to Improve the IJS

提案は採点システム(IJS)の改善に関する興味深いものばかりで、確度の高い海外情報では、グループには有名スケーターのコーチも入っています。匿名提案ではなく、グループのうちの10人が表紙に署名、ISU内における正規手続きを経た提案ですが、16日からモナコで開かれるISU総会の議案書には反映されていません。今後、これらの提案は議論を呼ぶものの、どの程度ISU内部で受け入れられるかも不明ですし、採用される部分があるとしても、'09/'10年シーズン以降となると思われます。が、示唆に富んでいる内容もあるので、各項目で注目される部分のみですが、ご紹介します。

1.ジャッジの匿名の廃止。不明朗防止。ジャッジリストをプロトコルごとに公開。
2.ジャッジの抽選の廃止。最高と最低を切り捨てるだけにする。
3.ISU選手権における予選の復活(シード付)。ジャッジの負担軽減による正確性確保。
4.シークエンスはステップかスパイラルまたはその混合、いずれか1つで良しとする。
5.フリーにおけるスピンの演技回数を、各回の内容を違えつつ計3に減らす。
6.スピンやシークエンスでのFeature加点部分をベーシックバリューとしては廃止、演技者の発意に任せる。
7.スピンポジションのうち「中間姿勢」の認定廃止。
8.スピンの最低回転数を2とし、チェンジエッジの加点廃止。
9.ステップシークエンスにてターンの種類数などスケート技術の展開をもっと求める。上体や腕の過剰な動きはGoE減点。
10.ジャンプ回転数のDG廃止、代りにGoE−3にて基礎点の25%以下とする。(二重減点の回避)
11.LutzとFlipのベースバリューの統一。WrongEdge の廃止。この2つで2回まで単独ジャンプ可とする。
12.略
13.ジャンプ転倒と2フットの場合、0点とする。
14.転倒はエレメント中は0.5、エレメント外は1.0、とする。
15.略
16.GOEポイントを各エレメントに対する係数とする提案。一段階ことにベースバリューの25%加減。
17.PCSの種類を3以下にし、6点満点、0.1刻みとする。.
18.会場のTVスクリーンに、全エレメントの録画を再生し、審査中のものに赤を表示。

以上がシングルに関係する提案のうち、それぞれ目にとまった点でした。
 
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